女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「神も仏もない映画」

2020年5月19日

特集「神も仏もない映画4」④ 
よこがお(2019年 社会派映画)

特集「神も仏もない映画4」

監督 深田晃司

出演 筒井真理子/市川実日子/池松壮亮

シネマ365日 No.3209

復讐? たかが嫉妬よ 

特集「神も仏もない映画4」

誘拐犯が甥だった。誘拐されたのはヒロイン市子(筒井真理子)が訪問看護師として働く岡田家の次女サキ。犯人との関係を打ち明けたものかどうか迷う市子に、長女基子(市川実日子)は強硬に反対する。そんなことがわかれば市子は岡田家に来られなくなる。基子は市子が好きで、部屋をシェアして一緒に住まないかと持ちかけたが、結婚すると打ち明けられショックだった。間もなく市子と犯人の関係がわかり報道陣が押し寄せる。インタビューされた基子は、市子が冗談として言った過去の出来事を取り上げ「幼い甥のズボンを下ろすような人よ。なぜ彼女が結婚できるのか。加害者のくせに勝手だ」と攻撃し変態扱いした。市子は職を辞し婚約者は去り再就職も閉ざされた。市子は基子が付き合っていた美容師、米田(池松壮亮)に近づき寝る▼「あんたと寝たかっただけ。復讐よ」「復讐? 俺、何かした」「あんたの彼女」「基子?」「今ね、私の裸の写真、送ったわ。私のことも話していいよ」「ごめん、俺たち、もう別れてるんだ。前から好きな人いるのだって。知らなかったの、俺だけ」。市子の部屋は狭くて暗く散らかっていた。カーテンを引いた室内で食事は畳に座り込んで壁にもたれ、袋物をつまみながらペットボトルの水をラッパ飲み。献身的な看護で信頼を得ている彼女とは裏腹の、索漠とした内面が閉じ込められている。てっきり東電OL殺害事件や、「ミスター・グッドバーを探して」級の暗黒の展開かと思ったら、男を寝取ったものの、男と基子は深い恋愛ではなく、基子の仕打ちは市子が結婚することへの嫉妬だった。散々マスコミの見世物にされ、仕事も結婚も失った市子にしてみれば充分復讐に値するのだろうけど、どことなく空振りね。基子にダメージはないのだもの▼甥が出所する。市子の姉は薬物過剰摂取によって死んだ。自殺かどうかわからない。身元引受人は市子だけだ。「サキに謝りに行きたい」という甥を連れて岡田家に出向いたが家は売りに出されていた。今さら会わせて、古傷を蒸し返させようとする市子もけっこうサドよ。市子は通りかかった「ボランティア支援募集」のポスターを見て参加する。介護の仕事だ。原っぱの向こうにホラーみたいに一人基子が立っている…と思った市子は神経的な発作を起こす。湖に入っていくシーンもある。死んだのかと思ったら生きていたから、これもズタズタになった市子の幻想だろう。「市子さん、また会えないかな」と男は言っていた。別れがたいものを感じているが、市子がどう出るかわからない▼市子が車に甥を乗せて運転している。車が信号に差し掛かり赤になった。目前の横断歩道に、車椅子を押す看護師ら数人が渡りかけている。患者の落し物を拾った一人が基子だ。市子はゆっくり車を基子めがけて進ませる。看護人たちは通りすぎた。市子は誰もいない歩道で狂ったようにクラクションを鳴らし続ける。先行き暗いわね。根っからストレートの市子が、基子を受け入れることはありえないし、男ともただの情事で終わりそうだ。リタと名を変え髪も服も派手になり(こっちの方が似合っていたが)、親族の罪で散々な目にあったけど、市子自身は犯罪者ではない。こんなふうに書くと、本作の詩的雰囲気を平凡な日常レベルに引きずりおろし、映画にもシャレにもならないことはわかっているけど、人の噂も七十五日。ほとぼりの冷めるのを待ち仕事すべし。それが解決よ。原因はたかが幼い嫉妬なのよ。踏んだり蹴ったりだったけど、市子のせいでも責任でもないところで、崩れるのはバカらしいでしょ。

 

あなたにオススメ