女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ナンセンスは素敵だ」

2020年5月22日

特集「ナンセンスは素敵だ6」② 
江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間(下)(1969年 ホラー映画)

監督 石井輝男

出演 吉田輝雄/由美てる子/土方巽/小池朝雄/大木実

シネマ365日 No.3212

茜空に舞い散る 

特集「ナンセンスは素敵だ6」

精神病院の女性病棟に迷い込んだ広介(吉田輝雄)は自分がなぜここに入れられたのか。同室の女性は半裸で淫乱で、グロテスクなメークをして奇声を発し這いずりまわり、といきなりマッディスト集団。女ばかり狂っているのが苦々しいが、ま、先に進もう。脱走した広介は聞き覚えのある子守唄を歌う女性に会い、その歌の所以が北陸のある島と聞いたところで、ナイフが飛んできて彼女は殺される。広介が犯人と疑われ、眼帯と鳥打ち帽というすぐわかりそうな変装で北陸行きの列車に乗る。車中目にした新聞で地元の名家、菰田源三郎の死亡記事を見る。源三郎が生き返ったことにして広介が成り替わります。妻の千代子、執事の蛭川(小池朝雄)、シャム双生児の秀子(由美てる子)、背中のくっついた双生児の一方がデビュー前の近藤正臣ですが、見分けのつかない顔になっています。風呂場に出てくるマムシ、天井から糸を垂らして口にたらす毒薬、正体不明の風呂焚き(大木実)、そして孤島に引きこもり謎の実験に没頭している広介の父丈五郎(土方巽)▼丈五郎は自分が醜い姿カタチに生まれたため、島でさらってきた男女を囲い、奇形の人物を産み増やし育て、島を楽園とし、世間のパワーバランスをひっくり返し、世の中がいかに偏見に満ちているか思い知らせてやると、いう狂人です。そのため双子の息子の一人に医学を修めに東京へ行かせた、これが広介である。もう一人は死んじゃいましたけど。丈五郎の妻が不倫して子供を産んだのはシャム双生児だった。広介は同情し、二人の背中を切り離す手術を施す。何もない部屋でシャキシャキとメスを使い分離する。ンなバカな…と思っても仕方ないのだ。広介と秀子は兄妹だった。丈五郎は岩窟に妻と不倫相手を閉じ込め、男は衰弱死、「女は強いな」と嘲りながら丈五郎は「腹がへったら食物はいくらでもある」と死体に群がるカニを食えというおぞましくも残酷な男▼妻は飢えには勝てず死肉とカニをほおばる。広介の分離手術で一人身になった秀子は広介を愛し合う仲となる。「兄妹とわかっても僕たちは別れない。天国で結ばれる」と書いた手紙を残し、花火の爆音とともに夕焼けの茜空に吉田輝雄と由美てる子の首(笑顔)が、手が、足がバラバラに舞い散った。爆笑ものですが純愛を笑えません。風呂焚き男(大木実)は明智小五郎。スラスラと暴かれた真相に、丈五郎は計画の失敗を知って自殺。全ては骨となり、血となり、皮となって地上に舞い散った壮大なエンド。石井監督じゃないけど整合性はゼロ。皮膚がもぞもぞする妙なインパクトだけが残り、「今の、なんだったの」。これこそ「うつし世は夢」なのでしょうか。西にルチオ・フルチとダリオ・アルジェントがいれば、東に乱歩と石井輝男がいるさ。ゾンビ、昆虫、ウジムシでゾッとさせるのもよかったが、好きで、好きでたまらない闇の世界に、怪奇ロマンで切り込んだ作家と監督の情熱に一票。

 

あなたにオススメ