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特集「ナンセンスは素敵だ」

2020年5月24日

特集「ナンセンスは素敵だ6」④ 
累(かさね)(2018年 ホラー映画)

監督 佐藤祐市

出演 土屋太鳳/芳根京子/壇れい/浅野忠信

シネマ365日 No.3214

土屋太鳳のダンス 

特集「ナンセンスは素敵だ6」

その口紅をつけキスしたら相手と顔が入れ替わる、という作品の基本条件に文句をつけても始まらんので(それもアリ)という前提で話を進めますが、その口紅はヒロイン、淵累(ふち・かさね)の母親も使っていたのですから、減っているはずよね。さらに娘は美しい顔を維持するためにバンバン、丹沢ニナとキスしていますからますます減っていく。なくなったらどうするのでしょうね。原作の漫画は読んでいないのでわかりませんが、映画では触れていなかったですね。累は醜い傷のある容貌コンプレックスを抱いて暗い青春を過ごしてきた。亡くなった母親(壇れい)は美貌の女優であった。でも彼女も誰かの顔を奪って、しかもその相手を家の中に監禁して鎖で繋いでいた、重い頑丈な鎖を見る限り健康で生きながらえたとは思えない。つまり母親は監禁殺人犯で、累はその血を受け継いでいることを知っている? このへんもぼんやりして視界不明瞭▼ニナには発作のように眠り込んで数週間、数ヶ月意識不明の期間が続く。その持病が、彼女が女優を続けていくことにダメージを与えている。ニナは今般、舞台で主役を得たが、いつ眠り込むかわからない不安があって、代役を探すようマネージャーの羽生田(はぶた=浅野忠信)に頼んでいた。連れてきたのが累だ。「何て醜い顔。何かの冗談? こんな奴が私の代わり!」とひどい侮辱。累はニナ壁に押し付け強引にキスすると、顔が入れ替わった。累はニナの美貌を手に入れ、ニナは(顔を奪われたとはいえ)丹沢ニナとして成功するのだから頻繁に顔を交代させて二人一人役を演じていた。交代というのは奪った顔の保存限度は朝の9時から夜の9時までの12時間なのだ。ニナこと累の暗さに惹かれた演出家の烏合。彼はニナの意中の人だったから嫉妬メラメラ。妨害したりされたりの挙句、ニナは発作で4ヶ月眠り続け、その間に累は大成功して次なる大舞台「サロメ」の主演まで決まった▼ニナの睡眠中、栄養補給や髪を洗ったりストレッチで筋肉をほぐしたり、シモの世話までしたのが累。これまでは誰がそれをしてくれていたの? 多分母親でしょうね。ところがその母親は累の顔になった我が娘を見分けられず「いつもお世話になって」と礼を述べている。顔だけじゃなく人生まで乗っ取るつもりか、こいつ▼顔の傷は子供の頃に同級生との争いが原因だ。いじめっ子がカッターナイフを突きつけ、ブスだ、ブスだとわめくものだから、そんな顔いっそこうしてやるわとナイフを咥えた。女の子はたまげて屋上から足を踏み外し転落死。累は事故だというが、ニナは殺したのも同然だと決めつける。どっちでも大勢は変わらんが、問題はそのナイフ。ホームセンターで売っている安物のカッターナイフで、唇の右端から目じりの上までグサグサの刀傷のようなすごい跡がつくのかよ。まるで妖刀村正ですわ。それから10年は経過しているのに、昨日の傷のように赤くテラテラ引きつっているのはおかしい。ついでに言うと眠り病にせよ、切り傷にせよ、治療や整形の努力を本人たちはしたふうが見えない▼次々浮かぶ「?」が最後まで引っ張ってくれました。烏合クンとは適当にサヨナラして、累は大女優の道まっしぐら。勘弁できないニナは屋上に呼び出して決着をつけようとする。「私はどんな顔でも自分のままで生きて行くわ!」と累に啖呵をきるが「醜い」だの「ぞっとする」だの「化け物」だの、一等最初に顔面攻撃したの、あんたじゃないの。よく言うよ。本作は高評価を持って迎えられました。よかったわね。美しさへの、女二人の命がけの執着が感銘と共感をかきたてたのに違いない。特筆ものは土屋太鳳のダンスシーン。しっかり仕上がっていてまともに感心しました。

 

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