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特集「最高のビッチ」

2020年5月26日

特集「最高のビッチ11」① 新珠三千代1 
女の中にいる他人(上)(1966年 サスペンス映画)

監督 成瀬巳喜男

出演 小林桂樹/新珠三千代/三橋達也

シネマ365日 No.3216

細い線を超えた 

特集「最高のビッチ11」

成瀬巳喜男監督の傑作と世評に高かった作品。今見てもフレッシュです。原作はエドワード・アタイヤの「細い線」を井出俊郎が脚色しました。クロード・シャブロルの「一寸先は闇」も同作の映画化です。キャスティングが最高です。小林桂樹の何どもうろたえる小心で優柔不断な男、新珠三千代の良妻賢母にして冷徹な決断者、三橋達也の妻と心の離れ安住の地を失った男の虚無感。引き込まれました。田代勲(小林桂樹)は実直なサラリーマン、親友である杉本(三橋達也)の妻、さゆり(若林映子)と情事に落ちた。マゾ的なさゆりが快感を味わうために首を絞めてほしいという。ためらっていたが興奮する女につられ、のめり込んだら本当に絞殺してしまった。さあ、どうする。田代は家に帰れば「メシ、フロ、寝る」亭主である。妻雅子(新珠三千代)は嫌な顔ひとつしたことがない、いつも夫を気遣い三つ指ついて笑顔で迎え、姑との仲も円満、小学生の娘と息子が二人。何不足ない家庭だった▼新聞テレビは田代さゆり殺害を報道し、近所でも話題になる。田代はノイローゼに。相手は親友の妻。世間に叩かれ会社はクビ。妻が怖い。家庭崩壊だ。黒い連想が押し寄せる。ある夜停電になった。ろうそくの灯りに照らされ、耐えきれなくなった夫は事実を妻に告白する。「つい、出来心というか。お前と子供達のことが頭から離れず辛かった。つい少し前まで続いていたのだ」「よかった。殺される前に終わっていて。もう何もおっしゃらないで。忘れるようにします。でも二度とそんなこと、いやよ」。夫は肝心なことを糊塗しているのに「打ち明けて気がラクになったよ」なんて、ごまかしたものだからますます心は泥沼。「僕は今日、会社は休むよ」「私におっしゃったあのこと、正直に話してもらってよかったと思っているの」妻のやさしさは今や業苦だ。二人で温泉に行くことにする。夏だ。妻は単衣と日傘で慎ましく夫の少し後を軽やかに歩く。トンネルに来た。夫は立ち止まり「お前に話したいことがあるンだ」またかよ、なんて妻は思いません。でも嫌な予感がした。案の定「杉本の細君は僕が殺ったんだ」「どうしても言わなければ、気が違いそうだった」田代「いつの間にか細い線を超えた気がする。線を超えるのは簡単だ。こっちにいたかと思うと向こうにいた。そのとき彼女はもう死んでいた」。正気と狂気の一線を超えたってことね。妻は動揺したが冷静に事実確認する。「殺すつもりはなかったのでしょ。誰も疑っている人、いないでしょうね。じゃ大丈夫。黙っていて。もし世間にわかったら子供達はどうなると思う。私はあなたが死ぬのだったら死にます。生きていくなら、どんな暗い人生も一緒に生きていきます。でも子供達を巻き添えにできない。忘れてしまうのよ。そんなバカバカしいこと」「できやしないさ。でも何もかも話したせいか心が軽くなった」。妻と夫じゃ、事態収拾に対する肝の座り方が違うわ。自分の気持ちがラクになればいいというレベルでしか考えられない男に、あなたが死ぬなら一緒に死にます、なんて言ってくれる妻。段差ありすぎだわ。

 

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