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特集「最高のビッチ」

2020年5月27日

特集「最高のビッチ11」②新珠三千代2 
女の中にいる他人(下)(1966年 サスペンス映画)

監督 成瀬巳喜男

出演 小林桂樹/新珠三千代/三橋達也

シネマ365日 No.3217

腹を決めた女 

特集「最高のビッチ11」

自分の腹一つに収めるプレッシャーに耐えられず、あろうことか、殺害した女性の夫、田代にしたら親友の杉本にまでゲロしてしまう。「さゆりさんを殺したのは僕だ」「やっぱり」「疑っていたのか、どうして言わなかった。言ってもらいたかったのだ。なじってくれ。訴えてくれ、殴ってくれ」…そういう問題じゃないでしょう。妻は絶句する。追い打ちをかけるように「俺は自首したい。卑怯者になりたくない」。妻は杉本に会いに行く。「あいつは悪い夢を見たのだ。あなたもそう思えばいい。忘れることですよ。自首する? させちゃいけません!」。田代さんはまだ言ってくれる。「明日警察に行く。俺はもう怖いものはない。世の中を欺いている父より、堂々と表玄関から自首した父を、子供達はわかってくれる」妻「あなたと一緒になってこんなに感動したことはありません」夫、満足気に「ウイスキーをくれないか」「はい」夫に背を向けて水割りを作りながら妻のモノローグ「こうなったら、表玄関から堂々と出て行こうとするあの人を、私は裏口からこっそり連れ出すしかないわ」カプセルを割って何かを混入する▼行きつけのバーで杉本が馴染みの店主と話している。「田代さん、あんなことになっちゃって」「見かけによらず神経質なやつだったからな」「ノイローゼですか。綺麗な奥さんと可愛い子供がいて」杉本、話を打ち切るように「大阪へ転勤だ。2、3年、ひょっとすると戻らないかも」。シーン一転、浜辺で遊んでいる子供達を雅子が見ている。「私は恐ろしいことをやってしまったのか。このまま黙っていられるか。誰かに告白せずにはいられないかも…でも私は子供達を守りながら、黙って生きていくわ」。さゆりの夫、杉本にすれば男出入りの多かった妻は、いつかこんなことになる予想はついていたのだろうし、殺害といってもサドマゾ・プレイの行き過ぎだったが、警察に話してもどこまで信用するか。結果、黙っているのがいいと判断し、田代を責めなかった。妻は初めから「バカバカしい」で一蹴している。善良な男性が情事なんかに手を出すものじゃないのよ。女にしたら遊びだったけど、まさか殺されてしまうとは。「線を超えていく」というのはクロード・シャブロルの映画にもよくあるテーマで、「沈黙の女〜ロウフィールド館の惨劇」でも、日常と異界の一線を通り過ぎる女たちの作品です。いい悪いはともかく、腹を決めたら女の方がすごいのね。何度も自分を裏切ってきた妻の性を、そういう女なのだと、どこか憐憫を持って見る男の寂しさ。それを演じた三橋達也が絶品でした。

 

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