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特集「ベストコレクション」

2020年6月11日

特集「心は紫陽花の花6月のベストコレクション」③ 
ルパンの消息(2008年 劇場未公開)

監督 水谷俊之

出演 上川隆也/遠藤憲一/長塚京三/街田しおん/日高鮎美

シネマ365日 No.3232

刑事訴訟法255条 

特集「心は紫陽花の花6月のベストコレクション」① 真実(上)(2019年 家族映画)

原作が横山秀夫のデビュー作。錯綜するエピソードが次から次へとつながり(伏線にもなって)、本作では本ボシは挙がった、お疲れさま、解散、これにて終了…の一歩手前で地味なベテラン刑事が、捜査班トップの溝呂木(上川隆也)に、ボソッと「ちょっと疑問なのですけどね」で、捜査は逆戻り、時効の午前零時まで30分、行くのだ! 全員ヨレヨレになりながら飛び出す。3億円強奪事件の15年後、あと一歩で容疑者内海(遠藤憲一)を時効の壁に阻まれた溝呂木。警視庁捜査一課から所轄に左遷され臥薪嘗胆の時、上司の藤原部長(長塚京三)が呼び戻す。15年前の女教師自殺事件が殺人だったとタレコミがあった。その再捜査だ。チェッ、今頃になって、と不満もあらわな捜査班の刑事たち。落下傘でいきなりチームの指揮官に着任した溝呂木への視線も冷たい▼女教師自殺は3億円事件の時効成立の日に起きていた。タレコミは3人の高校の教え子が犯人だという。警察は3人を事情聴取する。喜多はサラリーマン、竜見は地上げ屋、橘はホームレスになっていた。彼らが当時たむろしていた喫茶店が「ルパン」で、マスターが内海だった。落第生の3人は深夜、学校に忍び込み試験問題を盗むという「ルパン作戦」をたてる。実行段階で3人が見たのは暗い教室にいる女性二人、一人は赤い、もう一人は白いハイヒール。自殺とされたのは英語教諭の嶺舞子(街田しおん)。不倫して捨てられ、別人となり女性との関係を専らとし、百合雑誌に詩や写真を投稿していた。相手は音楽教師の日高鮎美(羽田美智子)だ。橘が試験問題の入っている金庫を開けたら嶺が閉じ込められていた。「死んでる」と橘が言った。しかし校庭の裏庭で発見された遺体の死因は頚椎骨折。窒息死ではない。さらに損傷の度合いから見て、二階からではなく屋上から落ちたと見るのが正しい。では嶺は生きたまま金庫に入れられたのか。3人は怖くなって逃走したというが、嶺を屋上まで運び投げ捨てたのは誰か▼橘と仲のよかった同級生が自殺した。両親がいなくて妹と二人暮し。麻雀で生活費を稼ぎ、出席日数を改ざんしようと学校に忍び込んだことがバレ、嶺教諭殺害の噂があった。残された妹は食うや食わず、母親が買ってくれたという絵本を抱き、ふらふらと電車の踏切に差し掛かる…それを訝しげに見ていた警察官がいた。喜多と竜見は聴取の段階でポツポツ口を割るのだが、橘は緘黙している。なぜ彼は親の家を出て仕事も辞めホームレスになっているのか。「金庫を開けた橘が、嶺が死んでいる、と言ったのは嘘だ、なぜなら彼女の体は暖かかったと当時の調書にある、とっくに死後硬直の始まっている時間なのに」と指摘したのは婦警の秋間だ。彼女は階段で藤原とすれ違うとき「自分の蒔いた種ですから」と謎のような言葉をつぶやく▼ある人物の取り調べが午前零時を過ぎた。時効成立だ、と勝ちほこる容疑者に「刑事訴訟法255条がある」と溝呂木。「海外にいる時間は、時効は進行しない。あなたには3日間の韓国出張があります。本件の時効成立は3日先だ」。真犯人はこいつしかいない、と思い当たるかもしれないのが玉に瑕ですがあえてネタバレはなし。重大な発言をして捜査の糸口を与えた秋間婦警は孤児となった妹で、線路の踏切一歩手前で彼女を助けた警官が藤原でした。背景が解きほぐされるにつれ、本作はミステリーであり、青春映画であり、純愛物語であり、ヒューマン映画である局面を呈してきます。散らばった数珠の玉が一本の糸に収斂されていく手際がお見事でした。

 

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