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特集「ベストコレクション」

2020年6月17日

特集「心は紫陽花の花6月のベストコレクション」⑨ 
愛欲のセラピー(2019年 劇場未公開)

監督 ジュスティーヌ・トリエ

出演 ヴィルジニー・エフィラ/アデル・エグザルコロス/ギャスパー・ウリエル/ザンドラ・ヒュラー

シネマ365日 No.3238

嫌いじゃない? 

特集「心は紫陽花の花6月のベストコレクション」

引いてしまいそうなタイトルだけど、原題は「シビル」。ヒロインの名前です。タイトルロールの精神科医を演じるのはヴィルジニー・エフィラ。作家になる願望もだしがたく、仕事を半分に減らして執筆時間を捻出、パソコンに向かった途端、意欲とは裏腹に原稿は進まない。彼女自身、問題を抱えている。アルコール依存症のグループ・セラピーを受講中、妹は母親との確執を姉に訴えに来る、シビルはまだ元カレに未練がある。そこへ新規カウンセリングの依頼。女優のマルゴ(アデル・エグザルコブロス)だ。相手役の俳優イゴール(ギャスパー・ウリエル)の子を妊娠した、彼は産んでほしいというが、出演している映画を下ろされたらキャリアはストップだ、今2ヶ月だ、どうしよう、先生、決めてください…▼マルゴはメソメソ泣いてばかり、ロケ地の孤島ストロンボリに出発し、そこで中絶する。ストロンボリ。懐かしや、イングリッド・バーグマンがロベルト・ロッセリーニとイタリアに駆け落ちして撮った映画「ストロンボリ/神の土地」の舞台ね。岩石だらけの山で、硫黄の煙で窒息しそうな島よ。ともかくマルゴは主役なのだが、絶不調でシビル先生に来てほしいと頼む。行くと監督のミカエラ(サンドラ・フラー)は悩ましげに「マルゴを現実に引き戻して。困らせてばかりでキレそう。彼女、イゴールの推薦よ。私は彼の子を欲しいと思っていたのに他の女を妊娠させるなんて」演じるサンドラ・フラーは、そう、ヨーロッパ映画賞5部門を制した「ありがとう、トニ・エルドマン」(監督・マーレン・アデ)の主演女優。トラブルばかり起こすマルゴにブチ切れ勝手にしろ、と海に飛び込んで、港まで泳いで帰る、すごいというか、笑っちゃうというか、異色の監督が似合っていた▼シビルはミカエルが放り出したあと、撮影を任され、ワンシーン無事に撮り終えたばかりか、パーティーでステージに上がって、しっぽりと歌は歌うわ…いきなり上がってきたシビルに本物の女性歌手が憤激、声を張り上げシビルの声をかき消すというガチンコ勝負に出る。その夜シビルはイゴールと夜の砂浜で過激なひと時。それを知ったマルゴとミカエルは敵の敵は味方とばかり手を握り、シビルは島に別れを告げる。10ヶ月後、映画は公開され好評、シビルはマルゴのセラピーの内容を書いた本を出版し作家の仲間入り。(そ、そんなことしていいのか)と思う間もなく彼女の独白だ。「マルゴを忘れる、ガブリエル(元カレ)も。みんなを登場人物として俯瞰してきた。私を理解できず彼らは不安だろう。今ははっきり言える。私の人生はフィクション。好きなように書き換えられる」…誰も不安じゃないと思いますけどね。一つだけ。シビルには娘がいる。離婚したパパに会えない。父と母は仲良くなかったと子供心に考えていたのだろう。「私、パパに似ている?」小さな声で訊く。シビルはやさしく答える。「似ているわ。あなたの中にパパがいるみたい」娘はもう一度訊く「嫌いじゃない?」小さな子の悲しみと、一人で抱いてきた不安。無言で抱きしめるシビルが本作中、いちばんグッドでした。サンドラはともかく、ギャスパーもアデルも小さな伏兵にさらわれちゃいましたね。

 

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