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特集「密室でミステリーを」

2020年6月25日

特集「別室でミステリーを」⑤ 
模倣犯(2002年 ミステリー映画)

監督 森田芳光

出演 中居正広/津田寛治/山崎努

シネマ365日 No.3246

ド肝抜かれた! 

特集「密室でミステリーを」

開いた口がふさがらない。ラストはロケットみたいに中居正広の生首が宙に舞うのだ。原作者・宮部みゆきはどんな顔をしたのだろう。犯人であるピース(網川浩一=中居正広)はエリートを僭称し、完全犯罪を企て、市井に生きる無名の人々を嘲笑する、連続殺人事件の犯人だ。誘拐した女性に「君みたいなつまらない人間は生きていても誰も注目しない。僕に殺されたら世間の耳目を集めるよ」。完全に狂っているね。彼の相棒のヒロミ(津田寛治)がエンドレスに気色悪い、いやらしい男。世間の通りを歩いていても、誰も彼らにハナも引っ掛けないのに、自分らだけで天才の大物ぶる。せいぜい高級ワインとフィレステーキを行儀よくナイフとフォークで食べているだけでしょ。本来なら滑稽で哀れな連中で、しかも犯罪者なのに、劇中の彼らのもちあげようはどうだ▼殺人事件が社会を騒がせ、イェール大学卒の気鋭のコメンテーターとして網川はテレビに登場し、サワリのいい受け答えとルックスで人気者に。ところがパネリストの一人が「一連の殺人はこの本にかいてある事件とそっくり。つまり犯人は模倣犯です」と決めつけたから、独創的な犯罪だと自負していた網川のプライドはズタズタ。違う、模倣ではなく僕のオリジナルだとゲロしてしまった。そして観念し、いきなり首が舞い上がる爆死である。人騒がせな男ね。生い立ちが不幸だから性格のネジ曲がった犯罪者になったと彼は思っている。そこで受け継いだ血がどうあれ育て方が真っ当なら、立派な人間になるはずだ、そこで自分の子供をあなたに育ててほしい、と赤ん坊を豆腐屋の店主、有馬(山崎努)に預けるのだ。一体どこから、誰の子…という経緯のさっぱりわからないまま、公園の一画のスチール製のトランクに入っていきなり登場するのだ。生首ビューンに続く、ある意味すごいミステリーのシーン▼本作は山崎努がいなければ空中分解したであろう。有馬の孫娘鞠子は網川の犠牲になった。「おじいちゃん、毎日お豆腐作って、同じことばかりして退屈にならない?」と祖父に訊く。「毎日に気を配れば同じ仕事でもいつも違う。同じ日だって一日もないのだよ」と祖父はやさしくいう。人生を観念の遊戯にした網川と対比する位置に有馬がいる。真面目に生き、家族を愛し、収入のある仕事を持ち、市井の一人としてつつましく生きる。でも人生と生活に「同じ日は一日もない」。それが実相なのだと教えてくれる。山崎努が禅僧のように静かな、自分のやり方を変えない生活人を演じる。うまい。もともと禅って、変わるものの中に変わらないものを、変わらないものの中に変化するものを見極める心眼じゃない? そういうレベルを演じられる俳優ってなかなかいないものよ。チャラ男とロケット首、最後は突如たる赤ん坊の出現で、あらゆる意味で度肝を抜く映画ではありました。

 

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