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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月1日

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」304 
西北西(上)(2018年 LGBT映画)

監督 中村拓朗

出演 韓英恵/サヘル・ローズ/山内優花

シネマ365日 No.3252

違うったら 

特集「映画に見るゲイ13」

オープニングの韓英恵が、何を見ているのがわからないまま、空間に目を投げている表情がとてもいい。自信のない、若いのに疲れた、あてのない未来を探そうとしているのでもなく、と言って今が投げやりというのでもなく、「ただここにいます」って感じなのね。白いTシャツの上半身だけが映る。簡素というより無機質な部屋。窓外は東京の夜明けか。青いトーンが水の底のような静寂を与えるが躍動するものはない。そういえばこの映画は水のように流れるのだ。ケイ(韓英恵)はモデルのアイと何ヶ月、あるいは何年付き合っているのかわからないが、明らかに倦怠期で、アイの作った夕食のスパゲティをケイは気のなさそうにフォークに巻きつけている。ケイとナイマ(サヘル・ローズ)が出会ったのはコーヒー店だ。店の隅のテーブルで泣いているケイを見かけた▼入局管理局でトラブルがあったナイマはかかってきたケータイについ夢中で苛立って話し、店内のおじさんからうるさいとか、やかましいとか、怒鳴られる。ナイマの声がまた大きくなり女店員がもう少し声を抑えてくれと頼みに来る。ナイマの隣に席を移ってきたケイは、女店員に大きなお世話だと逆ネジを巻き、さっきのおじさんは女店員に加勢「君、いくら話すのは勝手でも節度というものがあるだろう。何やっている人?まともな人じゃないね」。初対面でこう言う会話が成り立つのかどうかわからんが、とにかくナイマは自分に味方してくれたケイに、ケイはちょっと変わった雰囲気のナイマに興味を持つ。ナイマはイラン人留学生で日本画を勉強している。カラオケに連れて行ってもナイマは「人前では歌いません」「何かペルシャ語で喋ってみて…なんて言ったの」「あの時は話しを聞いてくれてありがとう」ケイの部屋に来る。「西北西はどっちですか」ポケットから鳥を出す。ナイマには驚かされる。西北西はムスリニのナイマが祈りを捧げる、メッカのある方角である。朝になってケイが目をさますと、ナイマはベランダでまだ祈りをささげているのだ。「ナイマは信じられるものがあっていいね」「それが私の生き方ですから」不動のごとき軸足である▼ここは大学。「いつも何してんの」「本を読んでいます。人を好きになったこと、ないんです。あなたは好きな人」「いるよ」「どんな人ですか」コーヒーショップで泣いていたのは彼女とケンカしたから」「彼女? それってレスビアンですか」「違う。いつも好きになるのが女の人ってだけよ「だからレスビアンですね」「ちがうったら」ケイはムキになって否定します。ごまかしているのではなく、自分の感情をレッテル貼りでジャンル分けしたくないだけなのです。より正直であろうとすると、むしろ彼女のような答えになるのでしょう。それにしても、いつも本を読む、人を好きになったことのないナイマとケイは水と油。ケイはナイマが好きみたいですが、どう見てもなり立ちようのない恋愛です。それにアイがいる。中村拓朗監督はしかし無理なこじつけを排除し、定理も条件もなく成り立つのが愛で、定理と条項があっても崩れるのが愛だと、雲が形を変えて流れるようにストーリーを進めていきます。

 

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