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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月2日

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」305 
西北西(下)(2018年 LGBT映画)

監督 中村拓朗

出演 韓英恵/サヘル・ローズ/山内優花

シネマ365日 No.3253

穏やかな日々 

特集「映画に見るゲイ13」

アイが虫垂炎になり入院、手術した。ケイは面会に行くが家族以外は、と断られる。病室の外で待っているとアイの母親が来た。「ケイさん?」「はい」「ケイって彼氏が女だと知って動揺しているの。あの子にそっちの気があったなんて。将来のこと考えて付き合っている? 何も言えないの。どうせいつか別れるからでしょ。二人が幸せならそれでいいなんて言わないで。どこの親が我が子の不幸を見たがる?」。アイは退院しナイマに会いに行く。「ケイとやったの?」「意味がわかりません」「ケイと会わないで」「どうしてケイさんを信じてあげないのですか」アイは虚を突かれ「きれいごとはいいから、もう会わないって言って。この世界でゲイを見つけ出すのがどれだけ大変か、お前にはわかんないのだよ」。現実的ですね、アイは。ケイに対しても同じ。単刀直入に「あんた、わたしと別れたいの? あの人(ナイマ)は私たちと世界が違う」「ナイマはいつか男を選ぶ。私たち、付き合っている意味あんの? 別れる方がアイの将来のためだよ」▼ケイの店に来た客がナイマの歌を下手くそとやじり、ケイがその客を殴り、殴り返されアザだらけになったケイをナイマが部屋で手当する。「ナイマの手は綺麗だね。目、緑色だったのだね」「やめて」「ここは日本だよ。誰も見ていないよ」そういう問題ではないのですが…縛りの強いナイマに女性同士の愛は通用しない。ケイは別れるしかない。ナイマは卒業した。イランから日本へ留学するのは、たぶん大変なことだったのだろう。無事卒業した、全部終わったよと、ナイマは国の母に報告した。ケイは部屋にいる。冒頭のシーンだ。「ケイ」自分を呼ぶ声に振り向く。アイが見つめていた。これでエンドだ▼ラストシーンはもう一つ作られていた。ケイの店にナイマが訪ねてくる。「卒業した? おめでとう。よくここがわかったね」「アイさんが教えてくれた」「同じ夢を見る。緑いっぱいのところでブドウがなっていて、食べたあと小川が流れているところへ行く。水浴びをする。大きな木があって昼寝するのだけど、隣にアイがいつも一緒にいてくれる」「穏やかな日々でしたね」と言ってナイマは泣く。涙は何もなかったことへの安堵か、ケイへの祝福か、かすかに残る後悔か。ケイ、席を外しトイレに行く。そのまま中にいるとナイマが店を出て行くドアの音がした。どっちにせよケイとアイは元どおりになり、ナイマは「穏やかな日々」のまま去ったわけね。元に戻るのも悪くないという古典的なケースを、三人の女優が演じ分けて退屈させません。特に直情径行型のアイと、どうしようもなくストイックなナイマの間で、ケイの不安と寂しさが往還する。その感情の揺らめきを韓英恵がよく表していました。

 

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