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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月4日

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」307 
さよならくちびる(2019年 LGBT映画)

監督 塩田明彦

出演 小松菜奈/門脇麦/成田凌

シネマ365日 No.3254

一緒に音楽やらない? 

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」

ライトで胃もたれしないところがいいのだろうけど、この映画、謎ね。クリーニング工場で働くハル(門脇麦)が、衣類のたたみ方も知らないと上司にボロクソに怒られているレオ(小松菜奈)を見て、「一緒に音楽やらない?」と声をかける。「痛々しい目をしていたから」という理由。アパートの部屋でカレーライス作って食べる。ハルが向き合って皿を置いたら、レオは皿を持ってハルの隣に移り、スプーンをカチャカチャ言わせて掻き込み、涙ぐむ。食べるのをやめてハルの肩にもたれる。ハルは戸惑っていたが、わからないように(わかっていたのだろうけど)レオの髪に唇を当てる。そういうシーンがありまして、二人はハル作詞作曲の歌を路上で歌い始める。ハルってすごい才能があるンだ、と認める取材者も出てきたが、自分の歌に生気を吹き込んでいるのはレオの歌唱だとハルはわかっている▼付き人にシマ(成田凌)が加わってシマはハルが好きらしい。レオはシマが好きになるのか、なりそうなのか、ともあれ女子二人の関係が微妙になる、らしいけど、おかしいな。シマは元バンド仲間の彼女に手を出して追放されヤサグレだ。ハルの歌が好きで、押しかけマネージャーになった男である。二度と同じ失敗はしないと、女二人にきちんと距離をとっている。ハルは同性が好き。レオは「わたし、ハルのためならなんでもする」と自動販売機にハルを押し付けて強引にキスするのだけど、ショートカットで登場したレオが、このシーンでは黒い長い髪だっていうのはどういうこと。回想なのか。つじつまのあいにくい映画だわね。ともかくレオもハルが好きなのだ。ハルは感情を表に出さないで音楽に情熱を注いでいるけど、レオに惹かれて声かけたのはハルだし、両想いの二人が禅僧みたいなシマの出現でメタメタとこじれる関係が謎。ハルは幼児期から自分のセクシャリティで悩んでいたみたいだったけど、レオに巡り合ってそれなりにパートナーができたのだからいいじゃない…とはいかず、ハルはレオに深入りしないから、レオはヤケクソみたいに行きずりの男、それも暴力男にばかり引っかかってひどい目にあい、顔にあざを作るたび「何度同じ目にあったらきがすむのよ」とハルに怒鳴られている▼最大の謎は二人が解散すること。7つの都市をツアーし、最後の函館のライブが終わったら解散と決めた。さっきからくどくど書いているけど、シマはハルとレオの味方だ。実現できなかったメジャーへのデビューを、二人ならできると信じている。心の澄んだ男で、ステージの隅っこで控えめにタンバリンを鳴らしている姿なんか、とても味わいがあった。どう考えても複雑にも微妙にもなりようがない三人の関係を、こじつけの恋愛もどきにしたことに無理があった。ハルもレオも最後のツアーだというのに仇同士みたいにケンカをふっかけあう。二人の女優が冒頭からアバズレのような言葉を投げつけ、睨みあうのは、別れたくない「裏返し」なのだから、ここをもっと掘り下げてくれないと物足りない。三人は綺麗サッパリ道を分かつはずが、シマの車を降りたハルとレオが、あっという間に車に戻り、トランクを開けてギターやらバッグやらを放り込み「はあアア?」ぽかんと口を開けたシマの間の抜けた顔で、いっぺんにこの映画はコメディふうハッピーエンドになった。独立系の「You and  i」は、デュオの女子二人が好き同士なのに別れ、再会した時は女囚と薬物依存症、刑務所での面会だったという映画。小品だったけど、社会不適合の女の子らが弄ばれ、生きていく苛烈さと再生が大げさにならず、音楽に救われるのが爽やかだった。本来ならそういう清涼感があってもいい映画なのに、ないですね。皆無。無駄にシマに大口、開けさせることはなかったわね。

 

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