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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月5日

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」308 
女狐(1967年 LGBT映画)

監督 マーク・ライデル

出演 サンディ・デニス/アン・ヘイウッド/キア・デュリア

シネマ365日 No.3255

「そうかしら?」 

特集「LGBT+映画にみるゲイ13」

原作はD・H・ロレンスの「狐」です。男一人に女二人の三角関係。寂れた雪深い農園で暮らすジル(サンディ・デニス)とマーチ(アン・ヘイウッド)。そこへ船乗りのポール(キア・デュリア)が現れる。登場人物はこの三人だけ。ポールの祖父の家をジルたちが買い、船に乗っていたポールは祖父の死を知らず帰宅した。マーチは男を警戒するが、ジルは大歓迎。古い家だから修繕が必要だ、船が出るまで二週間あるから滞在させてくれ、屋根やら薪の補充など、やらせてもらうというポールに快く応じる。マーチはどっちでもいいと態度保留。ポールがマーチに一目惚れして求婚、ジルは半狂乱になる。ジルとの関係に行き詰まりを覚えていたマーチはポールのプロポーズを承知するが、ジルを残しておけない、この話はなかったことにしてくれと手紙を書く。ジルとマーチには平穏な日々が戻ったが、再び姿を現したポールにマーチの心は揺らぐ。自殺同然のジルの事故死で物語は幕。家財道具を売り払い馬車に乗り、幸せになれるよと機嫌のいいポールに「そうかしら?」マーチは低くつぶやく。ノーテンキな男と違って、彼女は罪悪感に押しつぶされそうなこれからの人生を送るでしょうね▼三人の誰と、もし友だちになりたいかと聞かれたら誰も「ノー・サンキュー」です。ジルは経理と金銭面のマネジメントするしっかり者。この人と二人いると、水汲み、薪割り、牛の世話、力仕事はみなやらされそう。冗談じゃない。マーチと二人ならどうか。性格が開放的なジルに比べ彼女は何を考えているかわからない。パートナーのジルでさえ不安を覚える「心ここにあらず」状態。気を使うわよ、こういう人。よってパス。ポール? 金くれたって要らないわ。彼のプロポーズときたら「初めて君を見た時から結婚したいと思った。言ってくれ、僕の妻になると」つまり女に考えるヒマも与えないのね。彼って、女に耐えず自分の意思をふるう男なのよ。女が自我を持って何かを選択するなんて発想がない。ジルは彼にすれば恋敵です。そのジルに対して、というより女同士の恋愛に対して強い不快感を持っています。ジルとマーチの会話を盗み聞きするポールの表情にあるのは不信と嫌悪です▼マーチというのがどっちつかずで、それが彼女の良心のなせる技だとはわかるのですが、結果的に関係を混乱させる。すでにジルとの生活に屈託のあった彼女は、男には「ジルとの生活は続けられない」というものの、ジルを一人にさせられない。ポールは「マーチと結婚して同じ家の中で暮らす」とジルにいう図々しい男。ジルはあっさり「出て行って。私は別のパートナーを探さなきゃならないから」と言い渡す。どう見ても丸く収まるはずのない関係は、ジルの「死なせオチ」しか手はない。マーク・ライデル監督はしかし、実に美しい映像とサウンドで暗い関係を叙情と緊張に変えます。彼の音楽の使い方は天下一品です。「華麗なる週末」の「風のささやき」といい、ジャニス・ジョプリンをモデルにした「ローズ」といい、また人生の「黄昏」を彩った湖畔の夕景といい、言葉になし得ない映画言語の雄弁さ。本作では冒頭の夜明けの光を照り返すツララの冷たさが、これから始まる悲劇を予感させます。静寂にしてサスペンスフルなサウンド・トラックはラロ・シフロン。本作でアカデミー賞作曲賞にノミネートされました。

 

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