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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月6日

特集「映画に見るゲイ13」309 
脂肪の塊(2019年 LGBT映画、サイコ映画)

監督 天野友次郎

出演 みやび/田山由紀

シネマ365日 No.3256

サンマ男にサイコ男 

ゲイ関係にある二人の女性、沢村花子(みやび)と伊藤ユキ(田山ユキ)が、男二人を殺し心中する話。冒頭、無精髭の汚らしい男、野村邦男がサンマの頭を包丁でバスッと切り落とす。焼くでもなければ食うでもない。うつろにタバコをふかす。彼は子供の頃、母親の虐待に会い、地獄とは「俺の実家のことだよ」と拉致した女に言う。彼は連続殺人犯。女をさらってきては殺している。花子はこのサンマ男と関係があり、ユキは知っていたが耐えていた。ユキと抱き合っている部屋にサンマ男が入ってきて「そういう関係なのか」と罵り、ユキを殴る。花子は包丁でサンマ男を刺し殺す。ユキは男の死体をバラバラにして黒いビニール袋に詰め込む。凄惨な現場に花子は発作を起こして倒れる。記憶喪失する▼根岸はレストランで花子を見初めストーカーする。彼は粗末な部屋にキリストの絵を貼り、祈りを捧げ自慰して罰としてカッターナイフで腹を斬る。それを繰り返している。花子を付け回しビニール袋に詰めたバラバラ死体の半分を青いバケツに詰め替えたのも彼だ。「あんな酷いことして忘れてしまうなんて都合よすぎる。俺が思い出させてやる」と花子を追い詰めた。花子は悪夢を思い出したが「あなたが私たちの秘密を掘り起こした。あなたさえいなければ」と根岸を殺す。ユキはこれまでなんども花子に「傷つけられた。私にお金借りて男と遊んで泣かされた。全部知っている」「ごめん、拒否できなくて」というからかなり気の弱い子なのだ。殺人も二人となると精神的に「限界だよ。もう一回忘れたい。人生やり直したい」「わかった。あの海辺へ行こう。遠くへ行ってやり直そう」「いいえ、もういいの、ユキ」そう言って灯油を頭にドボドボ。ユキも同じようにドボドボ「ずっと一緒だよ」カチッとライターが鳴る。焼身自殺で心中するか。あんたら、付き合い、よすぎない?▼同情するには無鉄砲すぎるし、二度か三度のベッドシーンはあるものの、これほどの相手なら心中もやむなし、と思わせる濃いシーンでもない。気色の悪いサンマ男とサイコ男が交互に登場し、女を殴る、殺す、嫌がらせをするのには辟易したから、さっさと退場してくれてよかった。生きていても刑務所か精神病院の人生よ。サイコ男に関わったばかりに、割り損食ったのは花子とユキなのよ。タイトルの「脂肪の塊」も意味不明▼聞けば、天野友次郎監督は20代の才能のある監督らしいのだ。ただ、記憶喪失はサイコ・サスペンス定番の設定だし、同性愛にしてもそれが物語を紡ぎ出すまでの内容がない。女二人の情愛に説得力がないから、ベッドシーンはエステと間違えた。変態・殺人・女と復讐で思い出すのに、ピーター・グリーナウェイの「コックと泥棒、その妻と愛人」がある。グロテスクな刺激と無意味が、詩と散文の境界で押し合いへし合い饗宴する。どうせならそんな豊穣さを備えてほしい。しかしながら、監督・脚本・撮影・編集・作曲を一人でカバーした男天野友次郎、低予算下の奮戦に一票。

 

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