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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月11日

特集「映画に見るゲイ13」314 
Girl/ガール(下)(2019年 LGBT映画、事実に基づく映画)

監督 ルーカス・ドン

出演 ヴィクトール・ポルスター/アリエ・ワルトアルテ

シネマ365日 No.3261

美しい女性 

特集「映画に見るゲイ13」

ララは毎日鏡で全裸の自分を見る。平らな胸に筋肉がついてきた。「あなたの体つきは必ず変わるわ」医師はそう言ってくれる。「いつですか。時間がかかりすぎる。ホルモン剤の量を増やしてくれませんか」「気持ちはわかるけど、時間がかかるものなの。体重の減り方が激しいわ。性器が炎症を起こしている。テーピングはやめなさい。手術を受けるには体力が必要よ。今の状態では手術を受けるのは難しいわ。まずあなたが健康でないと。話したいことは?」「大丈夫です」「そうかしら?」複雑に絡み合った心の中をとても言葉で説明できない。ララは女であることを確かめようと、同じアパートの男子の部屋に行くが、不慣れな彼女では男は興奮しない。「ちょっと待ってくれ」ストップさせられ、ララは逃げるように部屋から出て行く▼「苦しいことを言ってくれ。俺は父親だぞ。タクシーの運転手だ。どこにいっても仕事はある。別の学校に転校したいのか? 迷いがあるのか?」「家族でここに越してきた。パパの仕事や弟の学校を変えさせたのに、自分は何も変わっていない」「お前は前の学校が好きじゃなかった。物事なんでも、いい面があるぞ。お前はいま国内有数のバレエ学校に通っている。治療してくれる医師たちはみないい先生だ。そうだろ」わかっている。わかっているのだ。でもいつになったら女の体になれるだろう。医師は言った「まず体力を取り戻す。しばらくバレエは休んで。ララは今の治療が合わないのかもしれない。それを見極めます。ホルモン療法をやめるわけではありませんが、体への負担が大きすぎるなら…」。パパがミロを学校に送って行った後、ララはあらかじめ救急車を呼んでおき、寝室に入り局部を氷で冷やした。ハサミを手にし、大胆にもペニスを切り落としたのだ。パパは病院に急行する。ベッドに横たわったララの手を取り言葉がない。ただ娘の手に頬を擦りつける。どれほどたったのか。ララは退院した。金髪をショートカットにし、大股で足早に歩いてくる。目に力がこもり、まっすぐ前を向く。美しい女性になって。そこで映画は終わる。突き放した終わり方だが、結局はララが切り開く人生なのだ。人が容喙する必要などないと、このラストは言っているようだ▼男から女へのトランス映画には「トランスアメリカ」「リリーのすべて」「彼らが本気で編むときは」。女から男へは「アバウト・レイ 16歳の決断」などがありました。本作にはシス・ジェンダーの監督や主演俳優が、トランス映画を作るのについて批判があったと聞きますが、賛否両論を含めジェンダー・フリーを掘り下げていくことが、ダイバーシティ本来のあり方と思えます。本作のモデルとなったノラ・モンセクールさんは「ルーカス監督とヴィクトールがシス・ジェンダーだから、トランスジェンダーの少女を描くのに無理があるという主張は間違っています。監督は約10年もの間、私と向き合った。本作は嘘も隠しもない私の経験を描いた物語です」と取材に応じていました。過度にドラマティックにせず、ドキュメンタリーのようにララの心身の形を追っていく、冷静な映画でした。ララを演じたヴィクトール・ポルスターは2002年、ベルギー生まれ。ベルギーのアントウェルベンのバレエ学校で学ぶ男性ダンサーです。男性パートしか踊ったことのない彼は女性パートに、特にトゥシューズで踊るのに苦労し、3か月かけて練習したそうです。

 

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