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特集 LGBTー映画にみるゲイ

2020年7月12日

特集「映画に見るゲイ13」315 
安非他命/アンフェタミン(2010年 LGBT映画、劇場未公開)

特集「映画に見るゲイ13」

監督 雲翔(スカッド)

出演 バイロン・パン/トム・プライス

シネマ365日 No.3262

本気には本気で 

水泳コーチ、カフカ(バイロン・パン)はオーストラリアから香港に戻ったばかりのエリート金融マン、ダニエル(トム・プライス)と出会った。レストランで彼女に振られたカフカが泣いていた。バイロンはそれを見ていた。彼のマンションは屋上にジャグジーのある豪勢な住まいだ。カフカは誘われるまま二人でジャグジーに入る。「初めて見た時、君は寂しそうだった」「僕が愛した人は僕を棄てる」「俺は違う」。でもカフカには過去のトラウマがある。4人の男に強姦され殺されかけた。恥辱と恐怖が覆いかぶさってくる。「男とはできない。それに僕はゲイじゃない。父さんは死んで兄はろくでなし。貧乏でバカ、その上不能だ」。ダニエルは焦らない。「君はカッコいい。武術も出来る。浮気しない。僕と一緒にいてくれ。僕はずっと君のそばにいると決めた。僕が守るよ」▼男同士のゲイ映画で、本作は男性のフルヌードがおそらく最も多い作品ではないかと思われます。カフカは26歳。水泳とカンフーで鍛えた肉体はダビデのよう。もちろんダニエルもキレイだ。ボカシこそ入っていますが、正面からどしどし撮っていまして、抱き合った時の背中のしなり、腹筋の畝、コリコリと盛り上がったお尻など、絡み合いはそれだけで絵になりますが、ラストの水中のラブシーンとくると神秘的ですらある。とまれ、本作がどういう映画なのかというと、母親思いのやさしい、繊細な青年が、ストレスとレイプの後遺症、それに続く母親の死という喪失感から逃れるために、兄貴の勧めるドラッグ(アンフェタミン)に手を出した。ダニエルは知的で冷静な男でして、カフカの精神的に困難な事情にあることをよく理解し、根気よく社会復帰に協力し、おかげで一時はクスリをやめるのですが、兄貴がそそのかし(どうしようもないクズ男です)再び始める。オーストラリアからダニエルのガールフレンド、リンダが来る。セレブの令嬢、父は元市長。彼女はダニエルがゲイであることを承知で「私を紹介するのは過去形で、カフカは現在形ね」とサバサバしており、ダニエルの恋愛がうまくいくよう祝福する。つまりカフカは貧しく、両親はなく彼女には振られ、貧乏かもしれないが、安給料ながら水泳コーチという仕事もあり、そう人生に絶望する年齢でも境遇でもないのである▼カフカはダニエルのパーティーで酔っ払い、白い翼をつけてビルから飛び降り、幸い肋骨を二、三本折って病院に拘束される。ダニエルはしかし、カフカがリンダをレイプしたことで激怒する。オーストラリアに帰ることにする。それでも「一緒に来ないか、向こうで結婚しよう」というのだから、カフカは目を覚まさなければいけないのだ。辛い状態だったのはわかるけど、本気には本気で応えなよ。空港に向かうダニエルを追ってカフカは拘束衣のまま病院を飛び出し、工事中の大きな橋が見える岸壁に来る。あの橋がつながる頃は僕たちの結果が出ているだろうとダニエルは言った。時間をくれというカフカに、彼は我慢強く愛情を持って接してきた。カフカは幻を見る。元カノが現れた。「彼はクスリを気にしない? あなたも彼を愛している? 運命の恋なら諦めること、ないわ」。ダニエルの幻が見えた。「一緒に飛ぼう」。差し出された彼の手を握り、カフカは足下の海に飛んだ。深い水の中で自由になったカフカとダニエルが上になり、下になり、抱き合っては離れ、とめどなく沈んでいく▼ドラッグに足をすくわれ、愛を成就できなかった青年。ラストがファンタジックなあまり、カフカの悲しみというより、天国への入り口みたいな映画になったのが弱々しい。ダニエルみたいないい男に出会っていながらもったいない、残念ね、というしかない。

 

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