女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2020年7月21日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス1」⑥ 
わるいやつら(1980年 犯罪映画)

監督 野村芳太郎

出演 片岡孝夫/松坂慶子/梶芽衣子/藤真利子/宮下順子/藤田まこと/緒形拳

シネマ365日 No.3271

松嶋屋! 

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス1」

豪華ピカレスク映画。主人公は、二人の人妻と特別な関係にあって、どっちの夫も死んだ、という犯罪の匂いプンプンの渦中の男。都内の大病院の院長、戸谷信一(片岡孝夫)がそれだ。野村芳太郎監督の一連の社会派映画とは一味ちがう、軽いタッチで話が進みます。左前の病院経営を、資産家の女から金を引き出して運営するというジゴロを片岡孝夫が演じます。松嶋屋ファンから総スカンを食いましたが、この時代の孝夫は関西歌舞伎立て直しのため、映画テレビを問わず顔を売っていました。名跡・片岡仁左衛門15代目襲名前夜、孝夫の奮闘が偲ばれます▼戸谷をめぐる女に、ファッションデザイナー槇村隆子(松坂慶子)、材木商の妻たつ子(藤真利子)、老舗料亭の女将チセ(梶芽衣子)、戸谷病院の婦長トヨ(宮下順子)。年上で病床にいる夫を戸谷の与える薬で毒殺したたつ子。不安に怯える彼女は戸谷に結婚を迫り、先代院長の愛人だったトヨは、今は息子とねんごろな関係。戸谷にとって邪魔になってきたたつ子を注射で殺す。チセは戸谷の最大の資金源だ。経営に口を出すうるさい酒飲みの極道亭主にウンザリ。あなたに一服盛られて死んでくれないかしら、と口に出すと、坊ちゃんの戸谷はチセの気を伺いたちどころに実行する。秘密を握るトヨが疎ましくなり、ホテルで首を絞め、死体は奥多摩の林に捨てた。離婚訴訟中の妻は慰謝料3000万円を請求した。税理士の下見沢(藤田まこと)は銀行との取引、不動産売却の手続きに戸谷の実印を預かっていった▼戸谷は隆子にフォーカス。結婚してくれと迫るが言を左右して隆子ははぐらかす。ある日警察がたつ子の死因に不審があるという家族の訴えで戸谷を調べに来た。おまけに下見沢が戸谷の預金1億円を下ろして行方をくらました。血眼で警察に下見沢の詐欺を言い立てるが、現れた井上警部(緒形拳)は二つの殺人事件についてコテコテに聴取、戸谷は観念する。トヨは死んでおらず、チセと手を組んで戸谷を追い詰めたのだ。女二人は殺人幇助の罪で3年の執行猶予。戸谷は無期懲役で網走刑務所に護送される。青函連絡船の中で、ふと目にした新聞は隆子がファッションショー当日、暴漢に刺され重傷と報じていた。暴漢は下見沢だった。彼は隆子と組んで資金調達を画策したが、成功した隆子に捨てられたのだ▼藤田まことと片岡孝夫が流暢な大阪弁で喋るシーンはさすがに聞き応え見応えあり。陰にこもった藤田まことが、上目遣いに孝夫を嫉視する目つきがサイコー。女も怖いが男も怖い。ただ一つ、松坂慶子が表社会から男一人抹殺する女にしたらビッチ度が足りません。ジャンヌ・モローじゃこんな生易しくないですよ。判決のシーンで佐分利信が裁判長になっているのは、「事件」と間違えそうだった。あれこれケチはつけるものの全体として楽しく見られます。しかし何と言ってもピカレスクの華はこの男。医師の倫理のカケラもなく、女たちの間を泳ぎ回り、形勢やばし、と見ると「僕が悪かった」しおらしく謝りやり過ごす。卑劣にしてしたたかに立ち回るが無計画な犯罪は驚きもので、ベッドシーンは下手くそ、最後には悪女に嵌められそこはかとない哀れを漂わせる、若き松嶋屋・仁左衛門の健闘に一票。

 

あなたにオススメ