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特集「ベストコレクション」

2020年7月22日

特集「真夏の夜は7月のベストコレクション」① 
はじまりは5つ星ホテルから(2014年 ヒューマン映画)

監督 マリア・ソーレ・トニャッツイ

出演 マルガレータ・ブイ

シネマ365日 No.3272

人それぞれの幸せ 

特集「真夏の夜は7月のベストコレクション」

マリア・ソーレ・トニャッツイ監督は本作の前に「ダブルボディ 愛と官能のルール」を撮っています。それもよかったけど、本作の方が彼女のキャラにあっているみたい。小品だけどよくまとまって、(そうだね、人とは全然違う幸福もアリだね)と素直に思わせてくれる映画です。ヒロイン、イレーネ(マルガリータ・ブイ)は、5つ星ホテルのサービスをチェックする覆面調査員。チェックインしてからリストに沿って一点一画おろそかにしない厳しいチャックを始める。白い薄い手袋をはめ、額の上、シャンデリアの房のガラス玉一つ一つをなぞる。引き出しの中、バスタオルのパリッとした感触、バスローブに漂う香り、カーテンの透明度、コンシェルジェは目を見て話すか、名前を確かめ歓迎の言葉は? 待ち時間は2分以内だったか、ボーイは清潔に手入れされた制服を着用し靴はそれに合っているか、ロビーや客室に特別な香りが使われていたか、照明空調の説明は簡にして要を得ているか▼彼女は元彼アンドレアとホテルで食事するときも会話はうわの空「ワインの温度が2度高い。スープは40度に足りていない」。ふと男に気づき(話って?)。彼の現在の恋人はギャラリーの経営者。妊娠して産むと言っている。「僕らの間にできていたら、君は産んだかい」イレーネは面倒臭そうに「いいえ」。40歳で独身。1年のほとんどを、世界中の5つ星を飛び回っている姉を妹シルヴィアは「大金持ちの振りして給料は職人並み。老後はだれがあなたの面倒見るの」「あなたの娘がいるでしょ」「だったら今のうちにコミュニケーションを深めておくことね」。それもそうだと女の子二人を海辺のバカンスに連れて行くが、夜になると「ママのところに帰る」と泣き出しお手上げ。マラケシュのパレ・ナマスカで粋な中年の男性を見かけた。向こうも気がありそうだ。モロッコの幻想的な、アラビアンナイトのような夜。アプローチすると「僕は古典的な愛妻家なのだ」とにこやかに振られてしまう▼アンドレアは産まれる子供のために家を探す。幸せな家庭像を描き始めた元カレになぜか寂しさを感じるイレーネ。シルヴィアと買い物に行ったが彼女が選んだワンピースに「最悪の趣味ね」。「たまに帰ってきてエラソーに指図ばかり。家庭も家族もないのになぜ忙しいの」姉のウィークポイントをグサッ。「あなたは家族がいてサクサク働く兵隊みたい」「家族持ちは修道女みたいな服でも着ていろと?」「あの最悪の服、買えば? 楽しく夕食作れるわ。じゃあね」。ベルリンのホテル・アドロン・ケンビンスキー・ホテルで出会った人類学者ケイトと意気投合し、腹うちわって話せる友人ができたことに感動した。翌日の約束もしたが彼女はその夜心筋梗塞で亡くなった。人生ははかない。ローマに戻っても妹はプイ。アンドレアにすがるが彼には新しい家族ができる。意気消沈した。ある朝シルヴィアが受け取った宅急便は、買いたかった「最悪の」ワンピースだった。仲直りのサインだ。空港から電話が入った。姉は「タンザニアに行くの。僻地の学校で英語の教師を探しているからボランティアで応募したの。人生を変えてみたいの」シルヴィア絶句。「冗談よ。マイレージで上海に行くの」いつもの笑い声を残し姉は機上の人に。モノローグはこうくる。「今回の旅(この映画のことならん)は期待に沿うものでしたか。時に困惑や孤独を味わっても誰かに薦めますか。今なら快適安全、かつ家族志向の選択肢も残されています。ただし幸せの概念は人それぞれ。心の趣くままに。この旅はあなたのものです」。悩んで戸惑ってそれでも選んで生きてきた人生。人呼んで「負け犬」かもしれないが、自分の人生はいつも5つ星でいたい…ヒロインの姿勢に無理のないことが「人それぞれ」の実感を明るく、自然なものにしています。

 

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