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特集「ベストコレクション」

2020年7月24日

特集「真夏の夜は7月のベストコレクション」③ 
天才たちの頭の中/世界を面白くする107のヒント(上)(2019年 ドキュメンタリー映画)

監督 ハーマン・ヴァスケ

出演 文中に含む

シネマ365日 No.3273

もう一つの世界 

特集「真夏の夜は7月のベストコレクション」

ドイツ人監督ハーマン・ヴァスケが「あなたはなぜクリエイティブなのですか」という質問を、30年以上にわたってインタビューしてきたドキュメント。彼はBMW、フォルクスワーゲンなど一流企業の広告製作に携わり、ドキュメンタリー作家としても活躍する。クリエイティブとは何か。頭の中から形のあるものに変換させる力とは何か。彼は1000人以上の取材から107人を厳選し、彼らの答えからクリエイティブの謎に迫ろうとしています。画家、映画監督、科学者…厳しい顔、偏屈な顔、難しい顔、にこやかな顔、いろんな表情で答えています。ヴァスケ監督が「私の頭ではわからん」とつぶやく「天才」もいました。私も自分の腑に落ちる答えを拾い上げました。みな誠実で率直で真摯です。意地の悪い答えはひとつもありませんでした。

 ▼イザベル・コイシェ(映画監督)=創造性は病気よ。治療法はなくそれを望む人もいないけど、撮影で追い込まれた時など、治療法があればと思うわね。創造性のある人は幸せになれないもの。私はマゾヒストかな?

 ▼デヴィッド・ホークニー(画家)=それしかなかった。仕方なく(画家に)なったのだよ。そうじゃないと人生に耐えられない。

 ▼スラヴィオ・ジジェイク(哲学者)=これは「ドイツ語版カフカ法文集」だ。創造性とは退屈な管理業務と結びつく。偉大な詩人や作家は銀行家や事務員だった。カフカが勤め先の保険会社で作った報告書の数々がこれだよ。素晴らしい。まさにカフカだ。100年後彼は法理論の第一人者として再評価され、小説はどっちでもよろしい、と言われる。人間は誰でも創造性を持っていて突拍子も無いアイデアなら出せる。だがそのアイデアは形に整えられないんだ。真の創造者は発想を秩序ある形で現すのさ。

 ▼ラス・メイヤー(映画監督)=私生活で何から刺激を受けるか? おっぱいだよ。それだけだ。バストとその谷間がすべてだ。僕が巨乳を世に出した。

 ▼デヴィッド・ボウイ(アーティスト)=なぜクリエイティブ? 見つけたいという願望のせいかな。大海原に船を出して世界の果てについても、さらに進むべき海を僕はその先に見出せる。創造的でいようと努力することは数少ない、価値ある試みだと思う。現実の隣にあるもう一つの世界。そこで探求するのは様々な不安と恐怖だ。

 ▼デヴィッド・リンチ(映画監督)=人間はみな想像への衝動を持っている。僕もその一人に過ぎない。最高にワクワクできるからだ。抽象的な概念から具体的像を創る。新しい世界を生み出すことだ。

 ▼オノ・ヨーコ(アーティスト)=これは虐殺について私の思いを表現した展示です(ヴェニスの墓地のような場所)。多くの家族、子供たちが殺されている。全ての国で起きた出来事よ。私の願いは虐殺の根絶。戦争も殺し合いもない世界。私のインスピレーションや創造性の根源は日々の現実世界にある。人は現実を知り立ち向かうことで賢くなる。

 ▼ジャンヌ・モロー(女優)=創造性は世界の問題を解決するか? しないわよ。でも創造的でいられる環境を維持するのは大切よ。自由な発想ができれば人は健全でいられる。強大な独裁者が現れたら自由な意見など言えなくなる。創造性は人が持つ密かで説明のつかない資質よ。それが発揮されるのは芸術だけじゃない。偉大な発見や旅の途中、毎日の生活の中にも活かされる。ホームレスの人も国を追われた難民も創造性を駆使して心の安定を図る。創造性は世界にとっての希望よ。

 それぞれユニークな世界観ですが、結局は、創造性とは何かに向かって、たった一度の人生をフルに努力することに尽きそうです。どんな恵まれた才能も日々磨かれるものであり、衰退もありボロボロになることもある。創り出すことは現実の隣にあるもう一つの世界、というボウイの回答が、とても美しく響きました。

 

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