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特集「ベストコレクション」

2020年8月8日

特集「精霊流し8月のベストコレクション」⑧ 
リチャード・ジュエル(上)(2019年 事実に基づく映画)

監督 クリント・イーストウッド

出演 ポール・ウォルター・ハウザー/サム・ロックウェル/キャシー・ベイツ

シネマ365日 No.3286

物の怪 キャシー・ベイツ

特集「精霊流し8月のベストコレクション」

1986年、五輪開催地のジョージア州アトランタ。リチャード・ジュエル(ポール・ウォルター・ハウザー)は、昼食の休み時間、ゲームセンターで射撃ゲームをしていると、同じ事務所の弁護士ワトソン・ブライアント(サム・ロックウェル)と顔を合わせる。何をしているのだと訊くブライアントに「法執行官につくときの練習です。FBI、シークレット・サービス、警察官…人々を守りたいのです」間もなく「警備の仕事をするのです」と、辞任の挨拶にきたジュエルに、ブライアントは「ゲス野郎にはなるなよ。権力は人をモンスターにする。約束だぞ」…人をモンスターにした権力の罠と、それにはまったジュエルと、冤罪を受けた彼を救出しようとするブライアント、そして息子を信じる母親ボビ(キャシー・ベイツ)との戦いが始まります▼五輪イベントで沸く記念公園で、ジュエルは爆発物を発見、会場に押しかけた参加者を速やかに退避させた。死者二人、数百人の怪我人は出たものの、彼の迅速な判断と行動は英雄と称えられた。三日後地元紙アトランタ・ジャーナルは「FBIはリチャード・ジュエルを容疑者とみている」とスッパ抜いた。書いたのは女性記者キャシー。彼女はFBI捜査官トム・ショウと寝てネタを取ったとなっているが、実在のキャシーはすでに他界しており、反論できない人間に対する一方的な中傷であると、映画公開後同紙は強く批判した。しかしこの時点ではセンセーショナルな特ダネ報道だった。ジュエルの立場は逆転する。FBIはプロファイリングとジュエルの履歴から容疑者のイメージを描き上げたにすぎない。マスコミの取材合戦となり、ジュエルの自宅の前はテレビ局が“村”を作り、約3ヶ月に渡ってジュエルの私生活は破壊される。それだけではなく、FBIの事情聴取、家宅捜索は常軌を逸し、おまけにジュエルが「彼らはアメリカ合衆国の法執行人、悪いことをするはずがない」と盲信して、罠とも言える調査に協力する。母親は「あなた、なぜあの人たちをかばうの?」と怒り、ブライアントは「俺に無断で一言も喋るな」と怒鳴りまくる。ブライアントがジュエルの弁護士になったのには訳がある。「なぜ俺に弁護を頼むのだ」「中小企業庁(ジュエルの勤務先、彼はそこの備品係だった)で、あなただけが僕をバカ扱いしなかった。脂肪袋、肥満、肥えすぎと悪口を言われる僕を人間として扱ってくれた」。ジュエルは肥っていた。収入も乏しく、高学歴でもないホワイト・トラッシュだ。記者のキャシーはジュエルを「肥満の醜いブタ」とひどい言い方で見下していた▼クリント・イーストウッド監督は「冤罪」を主軸に、被害者ジュエルに象徴された差別と理由のない暴力に今も私たちが晒されていることを明らかにしていきます。その手法は、これがクリントの「静かな凄腕」というべきか、冤罪を紐解く「情の部分」と「理の部分」を絡み合わせ、最後にきっちり落とし前をつけてくれる。「情の部分」を受け持つのが母親役のキャシー・ベイツ。女優もこうなると物の怪みたいな存在です。

 

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