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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2020年9月2日

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF5」② エドワード・ノートン1 
マザーレス・ブルックリン(上)(2020年 社会派映画)

監督 エドワード・ノートン

出演 エドワード・ノートン/ブルース・ウィリス/ダグ・バサ=ロー/ウィレム・デフォー/アレック・ボールドウィン

シネマ365日 No.3311

母親の愛撫 

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF5」

幻影師アイゼンハイム」(2008)以来、エドワード・ノートンのファンです。前作「僕たちのアナ・バナナ」から19年ぶりの監督第二作目。それがまあ、仲良しお友だちふう映画だった「アナ」から見事な変身で圧倒します。緊密な時代考証による、1950年代の犯罪都市ニューヨークの雰囲気。いいわね。主人公ライオネル(エドワード・ノートン)のトゥレット症候群(突如言葉を発し、ピタピタと指で人の肩や胸に触れる)、チックの発作など、ノートンがあまり上手いのでストーリーもさることながら、彼の表情と仕草に見入っていました。内容はハードな社会派ですが、主人公が時々見せる孤児の寂しさや、6歳で死に別れた母親の思い出にジ〜ンとします。「幻影師…」がそうであったように、エドワード・ノートンの気質そのものにある叙情が、本作の底流を流れています▼ニューヨークが現代の姿になるまでには裏面史がある。道路や橋や公園、公営住宅建設、高層建築を整備していくために、低所得者層が犠牲になりました。都市開発という名のもとに市は貧しい地域や少数民族の地域を作為的にスラム化させ住民たちを立ち退かせた。住宅の差別撤廃委員会の先頭に立つ若いアフリカ系アメリカ人、ローラ(ダグ・バサ=ロー)によれば「立ち退かせたい住宅地に“居住不可”の張り紙を貼り住民を怯えさせ、安値に家を売らせ、1500万ドルの土地を50万ドルで売却、広い部屋はいくつかに分割し、居座れば暖房を切り、修理にきて鋼管を盗んでいく、公営住宅を建設すると言いながら完全にスラム化させた。住民はどこへ? いなくなったのよ。この地区だけで2年間に20万人が消えた。みな黒人とラテン系ばかり。その黒幕が彼よ」。彼とは区管理局のモーゼス・ランドルフ(アレック・ボールドウィン。15もの役職を持ち建設業界を牛耳る街の支配者だった▼ライオネルは探偵事務所L&Lエージンシーの一員だ。所長はフランク(ブルース・ウイリス)。孤児院から引き取った子供4人を探偵に育てた。ライオネルにとって父親代わりだった。フランクはライオネルに荒っぽい仕事をやらせず、異常な記憶力を生かした調査や張り込みに充てていた。大口の仕事だといったフランクが出先で殺害される。「フォルモサ」という言葉だけを残して息を引き取った。一つ間違えば殺される大物が相手のようだ。他の3人はそれぞれ継続中の仕事があった。ライオネルはフランクの仕事を引き継ぐと決めた。ライオネルはトゥレット症候群こそあるが有能な探偵だった。フランクがいいのこした言葉を、脳ミソから絞り上げるようにして記憶を再現していった。「フォルモサ」とは「モーゼスの手下」だと突き止める。モーゼス・ランドルフが鍵を握る人物だった。フランクは何か彼の秘密を握り、それゆえ消されたのだ。なんだろう。五里霧中の中をライオネルは歩み出す。偽新聞記者になりすまし住宅差別撤廃委員会で知り合ったローザと、彼の父が経営しているクラブに行く。このジャズ演奏シーンが素晴らしい。ニューヨークの下町、ブルッックリンの一画。トランペットの旋律とやるせないドラム。ライトの明滅するクラブの人いきれに、頻繁にチック症状を起こすライオネル。大丈夫よ。ローザは彼の首の後ろをやさしくなでた。それは子供の頃、発作を起こした彼を落ち着かせるために、いつも母親がしてくれた愛撫だった。

 

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