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特集「新宿2丁目を連れて歩きたいボーイフレンド」

2020年9月4日

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF5」④ ベン・スティラー 
隣のリッチマン(2004年 劇場未公開)

監督 バリー・レヴィンソン

出演 ベン・スティラー/ジャック・ブラック/レイチェル・ワイズ/クリストファー・ウォーケン

シネマ365日 No.3313

最強のふたり 

特集「新宿2丁目を連れて歩きたいBF5」

ベン・スティラーが好きなので、ほとんど見ています。フェイバリット5本をあげるとしたら①「LIFE!」②「ペントハウス」③「ドッジボール」④「トロピック・サンダー 史上最低の作戦」。⑤同率で「マダカスカル1」「同2」「同3」。本作は入らない? うん、ちょっとね。胸が熱くなる①と②、ベンのコテコテ味堪能の④と⑤、文句なしに楽しい⑤に比べて、薄味なのよ。でも悪い作品じゃない。後味がいいし、怪人クリストファー・オーケンが出演していながら場をさらわれず持ちこたえたのは、ベンとジャック・ブラックだったからこそ。原題は「Envy」文字通り「嫉妬」です。隣同士に住む親友のティム(ベン・スティラー)とニック(ジャック・ブラック)。家族ぐるみの付き合いで通勤の行き帰りも一緒▼うだつのあがらないニックに「集中力をあげて仕事しろ。そうしたらこの椅子に座れる。座ってみろ。どうだ、気分いいだろ」ニックはヒラでティムは管理職なのだ。空想にふけりがちなニックをティムは軽く見ている。ところがペットの糞を一瞬で消すスプレー「フンこらホイ」を発明したニックはたちまちにして大富豪。豪邸なんてものじゃない。室内プールにボーリング場、広い庭には白馬コーキーが放し飼いにされ、馬はいつもティムの庭に来てリンゴをムシャムシャ、大きなフンをしていくが、妻のデビー(レイチェル・ワイズ)は「フンこらホイ」で消し去っている。親友に幸せになってほしいと、ニックは盛大にプレゼントづくし。それも苦痛だ。夕食に招かれると豪華で大きなテーブル(対角線上の人物が小さく見える)に美しい食器、グラス。執事がはべり、山海の珍味を給仕する。致命傷だったのはニックが出資を持ちかけた時、ティムはハナから相手にしないで断ったことだ。あの時投資していればと、デビーはつぶやき、息子は隣で食べた焼き菓子がうまかったと夢見心地。ティムの胸には、劣等感と嫉妬が黒煙を噴き上げる▼ついにティムはイライラが高じ、職場で上司を怒鳴りつけクビ。毎日不機嫌な旦那と隣家の格差を見せつけられ、妻は子供を連れて出て行く。やけ酒を飲みに入ったバーでJマン(クリストファー・ウォーケン)というホームレスと知り合う。彼の入れ知恵でティムは隣のリッチマン家を掻き回そうと画策する。酔っ払って放った矢がコーキーにあたり死んでしまった。Jマンが手を貸し、馬の死体を遠くへ捨てに行くが、途中で馬は車の屋根から落ちて行方不明。折しも嵐到来で探しようがない。「そのへんの川に落ちて海へ流れたのさ」とJマンの説に頷くティムだったが、このウソがとぐろを巻き、ティムは良心の呵責に苛まれる。戻ってきた妻に「ニックに本当のことを言って許しをこう」。妻は猛反対。というのも、人づてにティムがクビになったことを聞き知ったニックは「パートナーになろう。もうけは半々だ」寛大な提案にティム家の経済は安定。妻は「コーキーを殺したとなるとニックは許さない、服も買った、靴も買ったのに」と現実的だ▼やがてティムは隠し事に疲れ打ち明ける。またしてもニックは鷹揚にティムを許すのだ。ニックの罪悪感は解消した。嫉妬もコンプレックスも消えた。映画は、ティムのアイデアによる新商品が大当たりして万事順風満帆…なのだが、皮肉なことに「嫉妬」がなくなったとたん、映画はトーンダウンするのだ。ティムはただのアドバイザーとなり、ニックは人の好い共同経営者に収まる。反社会的人間としてどす黒い炎を燃やしていたあの男は凡庸なリッチになりさがってしまった、懲らしめてやると息巻いたJマンも、二人の成功に拍手するフツーの存在になった。後味こそ良いが、万人向けホームドラマというイージーな着地点だった。①と②の熱き心、③と④の逸脱ヒーロー、⑤の本物のファンタジー、遥かなり。ただひとつ。ベン・スティラーとジャック・ブラックのどアップがすごい。ベンはあの通り眉は黒々と太く鼻は突出し、引き結んだ唇、鋭く強い視線は肉食の翼竜さながら、濃い上にも濃い。彼が本気で怒ったワン・シーンは見惚れるほど男前である。ジャック・ブラックはよく見ると実に知的で繊細だ。これでなければコメディは作れないのだ。であるからして、多少の不満があることにはあるとしても、「最強のふたり」の役者を楽しむまたとない機会だと思おう。

 

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