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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2020年9月10日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」② 
おとうと(上)(1960年 家族映画)

監督 市川崑

出演 岸恵子/川口浩/森雅之/田中絹代/岸田今日子

シネマ365日 No.3319

「うちはさびしいな」 

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」

原作を読んだ時から思っていたのだけど、このお父さん(森雅之)って一人息子の碧郎(川口浩)にベタ寄りね。その結果姉げん(岸恵子)は完全なワンオペ姉貴よ。母(父の再婚相手つまり継母)はリウマチで手足が動きにくい。熱心なクリステャンでしつけに厳しく、碧郎とはソリが合わず、トラブルばかり起こす弟の世話、家事一切は、げんの肩にかかる。父親はあえて関わりにならない。彼は多少名のある作家で部屋に閉じこもって執筆している。陰気くさい家で碧郎は窒息寸前。ただ一人甘えられるのは姉である。「姉さん、今日の弁当、なに?」「ごめんね、オカカだけなのよ」。白いご飯に削ったカツオ節を振りかけただけの弁当だ。弟は内心気にしていないがわざと口をとがらす。姉につっかかって口喧嘩するのが楽しいのだ。時にはつかみ合いもやる。姉と弟は3つ違いだ。年の近い弟がいればわかるが、力まかせにモノを投げつけたり、ねじ伏せたり、はすぐ生じるのである▼碧郎は姉から金をせびっては遊びまわるが、その分、世間のスレッカラシの部分は肌で理解しているが、姉は違う。しっかり者ではあってもまったく世間知らずだ。よって弟は、ワルの仲間にそれとなく姉を見張らせ、すわ、という事態には農家のアヒルの群れを脱走させ、言い寄った男を追い散らかしたりする。「姉さんのマヌケ。そいつは姉さんをたらそうとしているんだ。俺たちは、母親はママ母で、父親はちょっと知られた作家で、姉さんは不美人だからつけ込まれたのさ」「不美人は騙されるなんて、バカにしてる」。母の友人田沼さん(岸田今日子)が姉に縁談を持ち込む。「ニューヨークに栄転する銀行家よ。外国暮らしになるから少し気の強い女性がいいのですって。いいお話じゃない?」姉は気乗りしない。父親は「お前がいなくなっても碧郎はなんとかやっていくさ」とあくまで息子目線である。万引き、スカール、モータボート、乗馬。ことごとく失敗するたび、尻拭いせねばならぬ弟を嫌がりも怒ることもせず、姉は「今度はもう少し静かな遊びにしたらどう?」やさしいものだ。弟は「姉さんは健全な女だからわからないんだ。一度ぐれて、何もしない奴のしみったれ加減が。年中ご飯の支度ばかりしないで、お嫁にいっちまえよ。俺のためにいかないのかい? うっすらと悲しいなあ。それがやりきれないんだ。ひどい悲しさのほうがまだいいや」。姉がつぶやく「うちはさびしいな」。さびしい家族。姉と弟だけが寄り添っている。その弟は発病した。

 

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