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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2020年9月13日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」⑤ 
極道の妻たち 最後の戦い(1990年 社会派映画)

監督 山下耕作

出演 岩下志麻/かたせ梨乃/小林稔侍/哀川翔

シネマ365日 No.3322

まっすぐなヒロイン 

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」

岩下姐御が死にます。一作目よりモタモタしていますが、中盤以後、ヒロイン瀬上芙有(岩下志麻)が、誓いを反故にした夫・瀬上雅之(小林稔侍)に三下り半を突きつけてからが本来の極妻ペースです。獄中の瀬上に変わり組を維持してきた芙有は、夫がライバル中松組の傘下に入ることを承諾したと知り激怒する。これまでの抗争で命を落とした若い者たちに顔向けできない。仁義にもとる。しかも扶有に惚れて姉妹盃を交わした夏見(かたせ梨乃)に、「わては瀬上を信じてる。あんたはわてを信じなはれ」とまで言い切ったのだ。夏見の夫は中松組の襲撃で命を落としていた。芙有は、瀬上が戻ってきたら夏見の夫の仇をとると約束していた。中松組4代目組長を襲名したのは田所だった。芙有が計画した事業の推進を任された夏見は、中松組傘下の妨害を跳ね返し、ごちゃごちゃしたトラブルは一切芙有の耳に入れず、単身田所を襲い乱射を受け死ぬ▼芙有「わてと夏見が姉妹分となった時から、田所と話がついてたんでっか」瀬上「4代目と盃交わしたのや」「どこまでお人好しや。あんたは田所の相続を反対して抗争の火つけた張本人や。田所が忘れるはずがない。夏見の前でも、はっきり仇を討つと言いましたやろ」案の定、田所にないがしろにされた瀬上は報復するから金を工面しろと芙有に命じる。「大砲でも鉄砲でも買うてきますけど、指揮はわてが取らせてもらいます。あんたには誰もついてきまへん。斬りますか? 我が女房斬れたら立派や。教えたげましょ。斬る、いうのはこうやりますのや!」。いうなり日本刀を自分の足の甲にグサッ。「なにさらす気や」「決まってまんが。田所、殺りますのや。あんたは関係おまへん。これはわてと夏見のケンカだす。あんたはせいぜい長生きしなはれ」。扶有は腹心の手下(てか)二人を連れ、田所が愛人のマンションから出てくるのを車で待つこと数時間。手下たちはいち早く護衛を始末し、マンション内に潜入した▼芙有は車の中にいる。喪服である。バッグからポケットウイスキーを出す。潜入組の中に最後まで夏見の元に残った豊(哀川翔)がいた。夏見から「見届ける」ように言われていた。彼は室内の乱射戦で壮烈に死ぬ。パトカーがマンションを取り囲んだ。中からストレッチャーの男たちが運び出される。死体ばかりだ。一人だけ、田所だけが落命しないでいた。あたふたとマンションから出入りする警官隊の動きをよそに、足をかばいながら芙有は田所に近づいた。薄眼を開けた彼のこめかみに銃口を当てる。とどめである。ゆっくりと去る芙有の後ろ姿に、警官隊が一斉射撃を浴びせた…法治国家の日本では考えられないシーンですが、「ボニーとクライド」あるいは「明日に向かって撃て」のオマージュでしょうか。途轍もないくくり方に肝を潰します。芙有の行動は「誓いは守る。約束は破らない」の一点に尽きます。これは自分と夏見のケンカだ」と割り切り、ついてこれない亭主に「引退しなはれ」。シンプルかつ明快な、彼女の思考行動様式の前に、チャラい複雑系は顔色なし。バブル崩壊の混乱期に、世間はモヤモヤを吹き飛ばす、それが男であれ、女であれ、まっすぐな主人公を求めていたのかもしれません。

 

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