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特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス」

2020年9月19日

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」⑪ 
極道の妻たち 決着(1998年 社会派映画)

監督 中島貞夫

出演 岩下志麻/かたせ梨乃/とよた真帆/中条きよし/愛川欽也

シネマ365日 No.3328

新しい女 

特集「幾億の星と幾千の月のシネマ・パラダイス2」

極妻10作目にしてファイナル。12年に及ぶシリーズの完結編とのふれこみです。志麻姉御の極妻を見てきて、どこに人気があったのか考えてみた。ヒロインは「私利私慾で動かない」「ストイックで生真面目に筋を通す」「身内を大事にする」。つまり信義を尊び目先の金で動かない。身内を大事にするのは、夫も含まれているが、彼らは男社会の通弊で「女は黙っとれ」とすぐエラソーに言うが「さよか。ほな」と志麻姉御が引くと、「待て、待て。またんかい」と慌てて引き止める。彼女は組織を仕切り、資金を調達してきたのは自分であるという実績と自信の上でモノを言っているから、夫が浮気しようと小遣いをせびろうと(チラ)と横目で黙視するのみ。いざとなったら(何ができまんねん)って感じ。大きな声では言わないが家父長制など屁のカッパである。本作では夫の傘下にありながら裏切り、味方の組長を暗殺した男、名越(中条きよし)に「けじめ」をつけるとき、夫が「男には男のやり方がある」と、例によって「女は引っ込んでおれ」に「女には女のけじめがおます。あんたら男に譲るわけにいきまへんのや」とバッサリ。家父長制への嫌悪すら垣間見せる。つまり志麻姉御とは新しい女だったのである▼ストイックという厳しさでいうなら、女を捨てた、というより女から解放されている。息苦しい厳しさではなく、伸びやかなのである。「あんたら、変わりなさそうやな」と笑いながら若い衆に声をかけた時の、えんじ色の和服の似合うこと。強いだけでは絵にならない、エレガンスでなければ絵になる価値はない…とは誰も言っていないが、近い意味のことはイヴ・サンローランが「心の優雅さがなければエレガンスは存在しない」と表現していた。ファイナルに「極妻の華」かたせ梨乃が志麻姉御の右腕で登場しているのはうれしい。極道の風上にも置けぬ男との決着の場に、姉御は「追善供養」と称する賭場を開いた。ダンボールにぎっしり詰め込まれた札が賭場に運び込まれる。追い詰められた名越が拳銃を抜くより早く、かたせ梨乃のマシンガンが火を吹き、敵方一家を嵐のようになぎ倒す。「ま、待て。話をしようやないか」と名越。岩下姉御は「死ね!」と一喝。拳銃で額を撃ち抜くのだ。射撃の名手だったのかい▼金は取り返した。落とし前はつけた。「終わったな」と姉御。「はい、行きましょか」かたせ梨乃がお茶にでも行くように言う。「留守は頼んだで」姉御は幹部に一言。二人はつかず離れず、長い一本道を歩み去る。かたせ梨乃はグラサンに黒いロングコートで、姉御あわやの危機に疾風のように登場する。志麻姉御は難敵に向かうとき、懸念を隠さず「どうや」とかたせ梨乃にだけ声をかける。やるとかやらないとかの答えをすっ飛ばし、かたせ梨乃は即次なる行動に移る。疾きこと風の如し。このコンビネーションも今回で終わりかと思うと名残惜しい。愛川欽也がムショ帰り、アルコール依存症の賭博師を好演、緊張感みなぎる盆の勝負を好演した。

 

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