女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2020年9月22日

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」③ 
ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(2020年 ミステリー映画)

監督 ライアン・ジョンソン

出演 ダニエル・クレイグ/アナ・デ・アルマス/クリストファー・プラマー

シネマ365日 No.3331

逆転の構図 

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」

「おや、どこかで見たような」のデジャヴに襲われる。華麗なる迷彩のごとく散りばめた登場人物。被害者は大富豪。誰しもに動機がある。懐かしき「オリエント急行殺人事件」を彷彿とさせるスタートです。そう、本作はイギリス伝統のミステリーの王道なのです。被害者ハーラン・スロンビー(クリストファー・プラマー)が85歳の誕生日に家族を招待し、翌朝死体で発見される。彼は高名なミステリー作家。喉を切られて死んでいた。警察は自殺と断定するが正体不明の誰かが雇った私立探偵ブラン(ダニエル・クレイグ)が調査を進める。アカデミー賞脚本賞にノミネートされたし、俳優陣も豪華、映画は大ヒットしましたから、粗筋は書くだけ退屈だと思います▼ダニエル・クレイグが初老の名探偵を渋く演じてさすが。007とはうって変わった新境地です。遺族は揃って莫大な遺産の相続に気をとられ…とはいうものの長女リンダは不動産業を一から立ち上げ成功させた大物。次男のウォルターは父の本の出版を一手に受け持つ出版社の経営者だが、お前にもっとふさわしい適職があったはずなのに、奪ってしまったワシを許してくれ、などともっともらしい理由のもとに父親からクビを宣告された。リンダの夫ジョンソンは浮気していることを父親は知っている。ハーランの亡き長男ニールの妻、ジョニはライフスタイルの伝道師。リンダとリチャードの息子・ランサムはハーランの孫だが問題ばかり引き起こし遺産相続から外れた。それぞれハーランとは緊張関係がありますが、唯一例外がマルタ(アナ・デ・アルマス)。献身的なハーランの看護師で、ハーランも彼女を信頼し、毎夜碁盤で向かい合う仲のいい碁敵だ。ハーランはいかがわしい身内を見捨て、遺言書によって全財産をマルタに譲られた。さあ、他の家族が黙っていない▼マルタは相続の圏外にいる、長男のランサムを頼りにする。ハーマンという人物が潔いというか、気が早いというか、マルタが誤って鎮痛剤とモルヒネを取り違え、致死量のモルヒネを射ってしまった。10分で死に至る。このままではマルタに容疑がかかる。救急車を呼ぶというマルタを止めたハーマンは、テキパキとマルタのアリバイ作りを指示し、自分で喉を切って死ぬ。だから自殺でして、殺人犯はいない、とブノワは解き明かした。ならば誰がブノワの依頼人か。ブノワが一同を集めて「依頼人の正体は自分を守りつつあなたたちの過去を暴きたい人物。この事件を言い表すなら“間違いの悲劇”です。真の悪人が一人います。邪悪なエゴに突き動かされ、おぞましい罪を犯した人物が。ランサムさん、私を雇った理由は? 財産はマルタに譲ると祖父はあなたに言い渡した、自力で生きていくしかない、逃げ道はない、でもあなたに妙案が浮かんだ。マルタが寝る前に注射することを知っていたあなたは薬の中身を入れ替えた。マルタが彼を死なせればたとえ故意でなくても故殺免責で相続は無効、あなたにも遺産が手に入ると踏んだ。マルタは長年扱ってきた経験から、指に触れた瓶の感覚だけで正しい薬品を選び注射した。しかし射った後、瓶のレッテルを見て自分がモルヒネを与えたと勘違いした。検死結果でモルヒネは検出されなかった。彼女に医療ミスはありません。ランサムさん、故殺免責のあては外れましたね」▼ラストに二転三転するプロセスが絶妙です。事件は解決した。遺族たちは荷物をまとめ屋敷を去る。自分のものになった豪壮な邸宅を眺めながらマルタは二階のベランダに出た。ふと下を見ると、長女とその婿、孫、次男、長男の嫁、その娘ら、昨日まで移民の娘だとないがしろに扱ってきた一族が自分を見上げている逆転の構図。長女リンダは父が残した封筒を開けた。「ウォルターは浮気している」と父は教えてくれていた。

 

あなたにオススメ