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特集「ベストコレクション」

2020年9月25日

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」⑥ 
パラサイト 半地下の家族(下)(2020年 社会派映画)

監督 ボン・ジュノ

出演 ソン・ガンホ/チェ・ウシク/パク・ソダム/チャン・ヘジン

シネマ365日 No.3334

日の降り注ぐ庭 

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」

ボン・ジュノ監督がすごいと思うのは、安直な説明を排し、いくつもの解釈を可能にするミステリアスな部分を残しながら、しかも物語そのものは明快であること。「グエムル/漢江の怪物」は突然変異した両生類の怪物と死闘する一般市民の家族。「殺人の追憶」は連続殺人事件の真犯人をおう執念の刑事。氷河に覆われた近未来の地球を走るハイテクフル装備の弾丸列車に乗る生き残った人類。そこは貧困層と富裕層の二つの世界があった。「母なる証明」は、最愛の息子の無実を晴らそうと調査する母親は、真犯人は息子だったという絶望に行き着く。どの作品にも笑えないユーモアがあり、嘆きと悲しみと差別がありました。本作で差別が最も鮮明に現れているのは、幼い息子ダソンの誕生パーティーです。招かれたギテク一家。降り続く雨の後で町は水害にあっていた。一方で家を流され着の身着のままで避難所にいる貧乏人、一方で高台の豪邸で華やかな祝宴に興じる金持ち。ギテクは普段愛想のいい雇い主の社長が、それとなくギテクの匂いを嫌悪した表情に憤怒し、衝動的に社長を刺し殺してしまう▼屋敷の地下シェルターには4年間住み着いた住人がいた。家政婦の夫グンセだった。家政婦が借金取りから夫をかくまうため、社長一家が引っ越してくる以前から隠していたのだ。地下には日常生活に不自由ないしつらえが施され、グンセは「俺はここが好きなのだ。ここにおらせてくれ」とギテクに懇願する。グンセはグンセでギテク一家の家族ぐるみの詐欺を暴くと脅し、格闘の挙句、家政婦は階段のてっぺんからチュンスク(ギテクの妻)に突き落とされ死亡。グンセは警察に届けるといわれ逆上、パーティー会場に乱入しギジョン(ギテクの娘)を刺殺、チュンスクともみ合い肉串で刺し殺された。ギテクは娘を失い、社長一家は主人を殺された。凄惨な殺害現場から逃走したギテクは屋敷の地下に潜んだ▼ある日、父親の発するモールス信号にギウは気づく。「母さんは元気らしくてよかった。俺もここで元気だ。あの日のことは夢のようだ。凄惨な事件のあった家を誰も買うまいと思っていたが、不動産屋は韓国の事情の知らない外国人に売った。24時間住み込みの家政婦がいるから、台所に忍んで行くたび命がけの思いだ。ここにいると何もかもかすんでいく」。父は再び日の当らない地下の住人となった。息子は返信した。「今日、計画を立てました。お金を稼ぎます。大金を。稼いだらまずこの家を買います。引っ越しの日、僕と母さんは日の降り注ぐ庭にいます。父さんはただ階段を上がってきてください。その日まで、お元気で」。ギテクの「かすんでいく」世界とは、それを生んだ格差社会とは、なんと理不尽で無情だろう。外に出れば殺人犯、地下にいるのは墓場と一緒。人目を盗んで腹を膨らせてだけ生きていく。それにしても息子の手紙にあるやさしさと切なさはどうだろう。「日の降り注ぐ庭」を夢見て生きていく家族に、監督は希望を捨てさせていない。

 

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