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特集「ベストコレクション」

2020年9月29日

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」⑩ 
マー/サイコパスの狂気の地下室(下)(2019年 劇場未公開)

監督 テイト・テイラー

出演 オクタヴィア・スペンサー/ルーク・エヴァンス

シネマ365日 No.3338

男に添い寝して死ぬ? 

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」

メルセデスという女性が同級生にいた。今はベンの彼女だ。マギーの母エリカはカジノでウェイトレスをして生活費を稼いでいた。偶然カジノで会う。こんな田舎町にはいられないと言って出て行った人がここで何をと、ウィトレスの制服をジロジロ見て意地悪く聞くサイテーの女だ。ベンと会って怒りがふつふつしていたスー・アンが車を飛ばしている時、ジョギングしているメルセデスを見た。ブレーキも踏まず轢き殺す。もはやノンストップである。エリカは「娘に近づいたら警察を呼ぶわ」とスー・アンに警告するが「あなたは美人でスポーツ系の人気者だった。今じゃカジノのウェイトレス。世間にはじき出されたのね。私は社会の中心にいる。傷ついた? 私が感じていた友情をあなたは踏みにじった。メルセデスを始末してやったのに」最後の方はエリカに聞こえたかどうかわからない▼家に来たベンにスー・アンはいう。「あの日の屈辱は消えない。でもひらめいた。私を犬扱いしたのはあなたが犬だから」。気がつくとベンはスー・アンの部屋に縛り上げられ点滴されていた。犬には犬の血液が合うのよ…そしてグサッ。誕生会パーティーをスー・アンの地下室でやりたいと言ったノーテンキな友だちがいて、仕方なくマギーらが集まった。お開きとなったが、酒に入れた催眠性鎮痛剤で意識のない4人をスー・アンは処刑していく。アンディの腹に包丁を突き立て、おしゃべりな女子は唇を縫い合わせ、マギーは手首を縛って吊り下げた。ここでもう一人登場人物が現れる。スー・アンの娘ジーニーだ。スー・アンが二階に上がってはいけないと禁止したのは娘を監禁していたからで、医者にも見せず独特の治療を施していた。彼女は学校でマギーにやさしくされたことがある。母親がおかしいこともわかっている。殺人現場を見たジーニーはマギーたちの脱出を手伝う。家の外にはパトカーが来ていた。観念したスー・アンは家に火を放ち、ベンに寄り添いともに焼け死ぬのだ。なんでこんな男と一緒に灰にならねばならぬのだろう。娘にも見放されたスー・アンが死出の旅路に選んだのが、最悪の男だったとは、返す返すやりきれない▼救いのない映画だがヒットした。理由はオクタヴィア・スペンサーの怪演に尽きる。大きなギョロ目。大黒様のような膨らんだ頬。ノシノシと歩く太短い体躯。恨みを秘めた目は時に切なく、時に憤怒を放ち、時に悲しみに沈む。批評家の意見は「幾つかの欠点はあるものの、オクタヴィア・スペンサーの名演がそれらを乗り越えている」と一致した。そうでしょうか。アウトサイダーのヒロインを死なせたのは、やっぱり生かしておいてはまずいからなのね。天罰覿面みたいに終わらせたところが、本作を物足りなくさせている原因じゃないの? 一市民として立派に「社会の中心」にいた彼女が逸脱し、急ハンドルを切って社会の外に自ら飛び出し、狂奔して殺害に走った。そんな女がクズ男と添い寝して心中するか。そこが彼女の純愛じゃない、という見方はあろうが、オクタヴィア自身はどうだったのだろう。「人格を否定したらその役はやれない」という彼女の言葉に(ま、他の選択も考えられるけど、スー・アンの人格を否定するわけにはいかんのよ)そんなふうに聞こえたのはうがちすぎか。

 

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