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特集「ベストコレクション」

2020年9月30日

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」⑪ 
レディ・バード(2018年 家族映画)

監督 グレタ・ガーウィグ

出演 シアーアシャ・ローナン/ローリー・メトカーフ/ティモシー・シャラメ

シネマ365日 No.3339

女子オズ 

特集「遥けき空鳥渡る9月ベストコレクション」

グレタ・ガーウィグが際立って高い評価を得た監督・脚本作。自伝的映画だと言われます。故郷サクラメントで進路に悩む17歳のクリスティン(シアーシャ・ローナン)は、自分にレディ・バードという別名をつけ(ここにいるのは本当の自分じゃない)ことを主張している。不満で一杯である。東部の大学に進学したいのに、母親マリオンは地元の市立大学にしろと強硬だ。彼女は精神科医だ。カリフォルニア大学バークレー校を卒業しながら就職できなかった(しなかった)クリスティンの兄がいるし、父親はウツで仕事が不安定、家庭の経済状況は苦しい。クリスティンは父親に加勢を頼み、密かに東部の大学数校に願書を送る。ボーイフレンドが出来たが彼はゲイだった。彼の家はハイソな環境にある広い庭付きの御殿だ。クリスティンは友だちに自宅の狭い貧相な家を隠し、彼の豪邸の住所を教える▼青春時代のバカらしいエピソードが無邪気に展開します。初体験はどっちも「初めて」だったはずなのに、相手の男カイル(ティモシー・シャラメ)は、すでに6人も女性を知っていて、クリスティンは頭にくるとか、女の子同士の友情のすれ違いからくる嫉妬とか、父親と兄貴が、立ち直ろうと黙って面接を受けに行くとか、こまごまと家族の断面が埋め込まれていく。思ったのですけどね、ありふれた日常を、奇をてらわず取り上げ、いつの間にかフラフラと「感動」という着地点にたどり着かせるこの手口、日本の至宝・小津安二郎に通じていません? ヒロイン、クリスティンが平凡で健康などこにでもいる高校生で、悩みにもならぬ悩みに葛藤するのには、贅沢言うなよ、と思うし、女友だちにも同じことを言われるが、我を通す強さだけは人一倍だ。がむしゃらに自分の道を突き進むのは好感も持て、片腹痛くもある。というのもかつての自分を振り返って、クリスティンと共通する「わがまま」や「焦燥」や、「母親への反抗」や、「ここは自分の居場所じゃない」という現状逃避と未来願望は、一つや二つ思い当たるにちがいないからだ▼一般的な網をバーッと被せておきながら、一つ一つのパーツを取り上げていくと、他の誰のことでもない、この物語は自分のことなのだという「特殊性」に気づかせる、そのリードが天下一品なのだ。「フランシス・ハ」も普通の女の子が自立するまでを騒がしくなく、マイペースで人生を生きるヒロインを描いて傑作でした。「ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語」なんか、古典の普遍的解釈というより、4姉妹個々人のケースを普遍的ケースに置き換える「わたし」の物語です。彼女が自分の土俵を割らない限り、ソフィア・コッポラのような妙にしち面倒臭い感性の漂い云々に色気を出さない限り、分かりやすい晴朗な叙情性は敵なし、でしょう。ありふれているけど深い、そこのところで「女子オズ」は生きるべきですもん。

 

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