女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2020年10月5日

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」⑤ 
グレタ GRETA(上)(2019年 サイコ映画)

監督 ニール・ジョーダン

出演 イザベル・ユペール/クロエ・グレース・モレッツ/マイカ・モンロー

シネマ365日 No.3344

その女、ヤバソ〜 

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」

とらえどころのない女と、とらえどころありすぎる両極端の女が、イザベル・ユペールの出演作にはあります。前者には「3人のアンヌ」「クレアのカメラ」「ガブリエル」「アスファルト」「EVA(エヴァ)」など。後者には「エル  ELLE」「ピアニスト」「主婦マリーがしたこと」そして本作。地下鉄でバッグを拾ったフランシス(クロエ・グレース・モレッツ)が中にあった身分証明書を見て落とし主に届ける。現れたのがピアノ教師、グレタ(イザベル・ユペール)です。映画の冒頭、地下鉄のプラットフォームを歩くイザベルの後ろ姿をニール・ジョーダン監督が撮っています。それだけで(こりゃもう、イザベルで始まり、終わる映画だな)と思わせられる。筋書きとか脚本とか二の次で「ユペール様、お達者で何より」と言いたくなるオープニングなのであります▼雨の日に落し物を届けてくれたフランシスを、グレタはやさしく招じ入れる。クラシックな室内は趣味がよく、コーヒーを淹れ、ピアノを弾いてくれた。「夫はリストが好きだった。ある日左手が動かなくて演奏をミスした。関節炎ではなく半年後に他界した。突然いなくなるのよ、愛する人って。リーベストロイメって知っている? 愛の夢という意味よ。愛が後に残すものは夢と思いでだけなの」。ユペール様がつぶやくと詩的であります。「娘のニコラはパリの国立高等音楽院で勉強中、いなくてもなんとかやっていける」寂しい思いをしないでとフランシスが慰めると「ありがとう、でもあなたもいずれいなくなる」。フランシスはそこで言っちゃうのだ。「友だちが私をガムみたいだというの。くっついて離れないから」「私からも?」「約束する」で、フランシスは網にかかった。フランシスと部屋をシェアしているエリカは「その女を母親代わりにするつもり? 母親が欲しいのでしょ。悲しいわ。でもその女は母親じゃないわよ」エリカはズケズケ言うが、基本的に友だち思いのしっかりした娘だ。ピアノが上手くて未亡人で娘はパリに留学中など、話がキレイすぎる。でも母親を亡くしたばかりのフランシスは依存体質から抜け出せていない。その女、ヤバソ〜というエリカの感は当たっていた▼夕食に招かれたフランシスは偶然グレタのクローゼットで、自分が拾ったハンドバッグと同じバッグがズラリ並んであるのを見つけた。グレタは几帳面に、届け主の名前と電話を書き留めている。自分の名もあった。気味悪くなってデザートも断り、早々に辞去するフランシスの背をグレタが見つめる。その視線がわからせてくれる。ガムのようにくっつくのはフランシスではなくグレタだと。

 

あなたにオススメ