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特集「ベストコレクション」

2020年10月7日

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」⑦ 
ジュディ 虹の彼方に(上)(2020年 伝記映画)

監督 ルパート・グールド

出演 レニー・ゼルウィガー/ジェシー・バックリー

シネマ365日 No.3346

酷使と虐待の日々 

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」

作品の評価もさることながら、タイトル・ロールを演じたレネー・ゼルウィガーの復活を心から喜びたい。数年のブランクは「普通の生活をしたかった」と本人は言っているが、スクリーンから姿を消すほど女優にとって危険なことはない。その間、地下水脈で吸収した養分にしっかり根を張らせ、アカデミー賞主演女優賞という結実をもたらしたことに拍手する。おめでとう、レネー。ラストの「オーバー・ザ・レインボウ」には涙が溢れました。悲しみのディーバ、ジュディ・ガーランドへの何よりの讃歌でしょう。47歳、ロンドンのバスルームで亡くなったジュディの死の数週間前から本作の「伝記」は始まります。1968年。ジュディは幼い子供の手を引き場末のクラブで歌っていた。安いギャラを受け取りホテルに戻ると宿泊費滞納で追い出しを食った。やむなく3番目の夫、シドニーの家を訪ねる。子供を引き取り学校に行かせるというシドニーと意見が対立、ジュディは一人で飛び出した▼行き先のないジュディにロンドンの興行主、バーナードから5週間に及ぶディナーショーの打診があった。ハリウッドで低迷していたジュディもロンドンでは人気があった。借金を返済し生活費を稼ぎ、子供たちと一緒に暮らせるように、息子と娘をシドニーに預けたジュディは単身ロンドンに発つ。到着後、バーナードとロンドンでの世話係、ロザリン(ジェシー・バックリー)がジュディを迎えた。しかし極度のプレッシャーからライブ当日にジュディは姿を現さない。ロザリンはなだめすかして衣装を着せステージに立たせる。別人となったジュディは圧倒的な歌唱力で観客を魅了し、ライブは連日盛況となるが、ジュディの不眠症は夜毎ひどくなった。子役の頃の悪夢が襲う▼ステージママの母親は「ジュディを太らせるな」という映画会社の社長ルイス・マイヤーの指示で、育ち盛りの子の食事を厳しく制限した。1年間ランチはスープだけ。18時間働いてジュディは自分の名前も忘れかけた。やけくそになってセットのプールに飛び込んだジュディにマイヤーはこういう。「君の本名はフランシス・ガム。太い足首、反っ歯、田舎者、ゲイの父親、ステージママの母親。自分が誰だか思い出せたか。君はみんなの親友だ。私を裏切るな。撮影を遅らせるな。約束を守ると言ってごらん」「すみません、マイヤーさん」▼不眠のために睡眠薬を、もうろうとした寝覚めにはアンフェタミン(覚せい剤)を、交互に母親は与えた。虐待である。薬物依存は一生ジュディから抜けなかった。撮影には遅れる、すっぽかす、自殺未遂。商業主義の歯車の下で、母はハリウッドに殺されたというジュディの娘、ライザ(ミネリ)の発言は正しい。全盛期の輝く女優が、機械仕掛けのロボットのように酷使されボロボロになる様を、ヨーロッパの映画人たちは恐怖してみていた。カトリーヌ・ドヌーブもジャンヌ・モローもシモーヌ・シニョレも、ハリウッドに招かれはしたが決して深入りしなかった。彼女らはジュディ・ガーランドの、マリリン・モンローの悲劇に怖気を振るったのだ。

 

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