女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「ベストコレクション」

2020年10月9日

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」⑨ 
ミッドサマー(上)(2020年 ホラー映画)

監督 アリ・アスター

出演 フローレンス・ビュー/ジャック・レイナー/ビョルン・アンドレセン

シネマ365日 No.3348

殺しのカルト集団 

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」

現実の表層世界をめくると、心と脳を破壊する異界のドラマが待っている。「ヘレディタリー/継承」ではそれがミニチュア模型の導入によって、本作では天地逆転した地名の標識で示される。ここから先は常識のひっくり返る世界ですよという暗示だ。文化人類学を専攻する学生、クリスチャン(ジャック・レイナー)、ジョシュ、マークたちはスウェーデンの留学生ペレの故郷の小さな村ホルガの伝統行事、夏至祭を見に行こうと声をかけられ出かけることにする。クリスチャンの女友だち、ダニー(フローレンス・ビュー)が一緒に行くことになる。彼女は双極性障害の妹の放火によって、両親を含む一家3人が焼け死んだ過去のショックがまだ癒えない▼到着した村では、男女とも緩やかな白い長衣に身を包み、長老が歓迎してくれた。穏やかな丘陵が連なる牧歌的な場所。住居は木造の山小屋風。そこは全員が家族として共同生活を営むコミューンだ。夏至祭には、古代北欧に伝わる村の風習である、幾つかの行事があった。草原のテーブルに全員揃ってとる食事。年長者の男女が最後に席に着き、食事を終えると椅子に座ったまま高い崖の上に運ばれ、身を投げる。崖の下には落ちたとき顔面がつぶれるよう岩が置かれ、先に飛び降りた女性は脳みそぐちゃぐちゃになって即死。つぎ男性。細面の品のいい彼は誰あろう「ベニスに死す」で世の男女をうっとりさせた美少年、ビョルン・アンドレセンだ。65歳になった。飛び降りて足は折れてヒン曲がったがる死ねず、呻いているところへ大きなハンマーを担いだ少女が走り寄り顔面を一撃、3度も振り下ろし絶息させる。なんでこんな役に出たのだろう。ダニーら余所者組は気分が悪くなる。いい遅れたが、ダニーたちとは別に男女ペアが招待されていた。コニーとサイモンだ。この二人は早々に退散を表明するが…▼風光明媚な村とは裏腹の妖しい出来事が起こる。昼食のパンに陰毛がまじり、赤いジュースは血で作ったものだ。飛び降りた男女の遺体は焼かれ、灰となって撒かれたが彼らの献身をいただくという意味で、食用に供されている。ジョシュは夏至祭を論文にするつもりだった。クリスチャンも遅れて名乗りを上げ、「人のテーマを横取りするな」とジョシュが怒る。村には古い記録が形象文字のルーン語で書き継がれている。この文字が書けるのは村でルビンだけだ。彼は計画的な近親交配によって産まれた。長老いわく「我々の賢者は全て意図的な交配によって産まれる」。記録を見せてくれとジョシュは頼んだが拒否。こっそり神殿に忍び込んだジョシュはマイクの顔の皮を被った男に襲われた。マイクの、というのは、思慮の浅い彼は異文化の習慣や風習に敬意を払わず、村の神木である大きな枯れ木に立ちションし、報いを受けて殺されたのである。ジョシュとマークが消された。サイモンは帰るといって駅に向かい、コニーを迎えに来るはずが来ない。コニーは後を追うが、やがて若い女の叫び声が、森の中から聞こえた。生き残っているのはクリスチャンとダニーである。美しい静かな村の優雅なコミュニティは殺しのカルト集団だ。72歳になれば崖から飛び降りるのが掟だって? 実態は強制自殺であり、しかもコミュニティ存続のためには外部から新しい血を導入する必要がある。ダニーたちは初めから生きて帰れるはずがないのだった。

 

あなたにオススメ