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特集「ベストコレクション」

2020年10月11日

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」⑪ 
ジュリアン(上)(2019年 社会派映画)

監督 グザヴィエ・ルグラン

出演 ドゥニ・メノーシュ/レア・ドリュッケール/トマ・ジオリア

シネマ365日 No.3350

ママが離婚してよかった 

特集「10月は燈火親しむベストコレクション」

離婚した夫婦の親権について話し合う席。判事と双方の弁護士が同席する。11歳の息子ジュリアン(トマ・ジオリア)の陳述書はこうだ。「ママと姉とおじいちゃんの家にいます。あの男が来るのが恐ろしい。ママのことが心配なので離婚はうれしい。僕も姉さんもあの男が嫌いです」。あの男とは父親アントワーヌ(ドゥニ・メノーシュ)だ。DV(家庭内暴力)で歪む家族関係を取り上げつつ、クライマックスのサスペンスが二の句をつかせない見事な映画。息子に蛇蝎のごとく嫌われながら、父親は自分が家族を愛していると主張する。妻ミリアム(レア・ドリュッケール)に対する未練を断ちがたい。判事は妻に定職のないことから共同親権とし、2週間に一度、週末をジュリアンは父親と過ごさねばならなくなる▼夫婦は別居してからお互いの実家にいるが、アントワーヌは妻の実家の近所に引っ越し、よりを戻そうと虎視眈々、機会をうかがっている。ジュリアンの姉ジョセフィーヌは18歳に達し、自分の意思で両親を選べる。彼女も父親に暴力を振るわれたが、今は彼氏もでき、自分の幸福の追求に邁進。利己的に見えるが、家庭内暴力からの逃走願望でもあろう。最初の面会の週末、仮病を使って会いたがらないジュリアンを、父親はミリアムに「約束を守らないなら訴える」と脅し、無理やりジュリアンを連れてこさせる。ジュリアンに対するアントワーヌのしつこい質問(妻の動静を知ろうとしている)に、彼の実父さえ「お前は何でもぶち壊す。子供があいたがらないのは当然だ」と怒鳴る▼アントワーヌがいくら聞いてもジュリアンは言を左右して母親の連絡先を教えない。母親を父親に合わせたくない息子の憂慮が、幼いだけに見ているのが辛いです。姉ジョセフィーヌの高校のパーティーに参加したジュリアンとミリアムは、外にアントワーヌの車が止まっているのに気づく。アントワーヌの行動がストーカーじみてきた。ミリアムは密かに別のアパートを新居としジュリアンと引っ越していた。アントワーヌは実父からも追い出され、実母からも疎まれ、受け入れてくれる家族がいない。元妻と元家庭への愛着は募るばかりだ。しかし父親は冒頭、あれほどきっぱり「父親は嫌いだ、ママと離婚してくれてよかった」という息子の陳述を聞かされたにもかかわらず、妻と子には自分が必要だと主張してやまないのです。自信というより錯覚でしょう。自分なりに愛しているから何をしても許されるという。暴力への恐怖と嫌悪は受ける側でないとわからない。夫の暴力に自分と娘の身を守ろうとして射殺事件に至った実例もある。アントワーヌはとうとう新居を探し当てます。ここから先が秀抜なサスペンスです。

 

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