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特集「B級映画に愛をこめて」

2020年10月16日

特集「B級映画に愛を込めて15」④ 
愛欲の輪舞(2016年 劇場未公開)

監督 クレイグ・グッドウィル

出演 アナリー・ティプトン/マルタ・ガスティーニ

シネマ365日 No.3355

詐欺師の殺人パーティー 

特集「B級映画に愛を込めて15」

視聴者を愚弄するという点では、本作と「アンナ・オズ」のどっちに軍配を挙げるべきか。妄想あるいは夢オチ映画の傑作はいっぱいあります。「囚われの美女」「マローボーン家の掟」「かくも長き不在」「薬指の標本」「告白小説、その結末」など。どれも「妄想は真実を語る嘘」という軸足にブレがなく、映画の中を存分に彷徨させてくれた。本作について言えば劇中の殺人はヒロイン、セイディ(アナリー・ティプトン)の幻想だった、で片付けられそうに見え、実はホンモノだった、彼女と恋人関係になった女優志願のフランチェスカ(マルタ・ガスティーニ)は「二人で真実を乗り越えましょう」と不安に怯えるセイディに友だちヅラするが、ドラッグパーティーの主催者であり、セイディの元カレ、アレックスの片棒カツギのペテン師だった▼アレックスの口車に乗って彼の別荘(宮殿のような古城)に行くセイディを、作中唯一マトモな男であり現恋人のティエリは阻止するが、彼女は行ってしまう。心配して迎えに来たところ、彼はパーティーで血祭りにされた。セイディは夢の中で血の海に横たわる裸の女たちを見るが、どうやらドラッグパーティーは、ハイで区別のつかなくなった参加者が殺し合う殺人遊戯だった。怖くなったセイディが「帰る」と言い出し、引留めはしないとアレックスが鷹揚に言うのに彼女はなぜか残留する。セイディは官能小説家である。ブックツアーでヨーロッパ各地を回っており、イタリアのトリノの会場にアレックスが来てフランチェスカを紹介した。豪壮な宮殿と贅を凝らした室内の調度品、壁画、図書館のような図書室。セイディは圧倒されるが地元住民は「呪われた地」だと恐れている。でもその理由は劇中明らかにされない。屋敷の地下には「無実の人が脱出用に作ったトンネル」がある。何の罪の無実かこれも釈明なし▼中途半端なままお話は一人歩きし、セイディとフランチェスカはベッドを共にする。そのシーンは念入りであるものの女性二人の心理劇とは無縁であるから、脱いだ女性二人をとっくり見てくれたらよろしい、という安直なノリに過ぎない。アレックスの忠実な執事が屋敷を仕切っているが(豪壮な邸宅に彼以外召使がいないのも不思議)地下トンネルで脱出するセイディを、彼は見て見ぬふりをして助けてくれる。雇い主アレックスの危険な嗜好を知っているからにちがいない。トンネルを突き進んだら教会に出た。そこには聖職者がいて、セイディを見るとローブを脱いで去る。よく生きて脱出したなという意味か。セイディは野超え山超え、呪われた町から逃走する。シーン変わってセイディはブックツアーでニューヨークに来ており、経験した殺人パーティーを書いた自著の朗読中。会場にフランチェスカがいて、セイディが必ず自分達のところに戻ってくると予言して車に戻る。中にアレックスがいるではないか。パーティーでセイディは彼のお腹を刺したはずなのに死んでいなかったみたい。このブックツアーにティエリは同行していないから、殺されたのは現実なのだろう。アレックスとフランチェスカの車をセイディが見送ってエンド▼この二人は犠牲者を探す殺人狂か。それならそれでもっと他の展開があろう…はたと気がつくが「他の展開」など問答無用で切って捨てるのがこの映画のすごいところなのだ。誠実な恋人の忠告にもかかわらず、元カレ・アレックスとのベッドを思い出し、誘いに乗るセイディが官能小説家? それ、淫乱女の別名なの? 本作は極秘パーティーを主催する詐欺師(参加者はセレブばかりで、ボロクチの参加料をとっているにちがいない)が、カモと見込んだセイディに逃げられ、ニューヨークまで追いかけてきて「必ず自分たちのところに戻る」とは、脅し文句よ。女優志願のフランチェスカの一人芝居のセリフ「痛みとは堪えるものではなく慣れるもの」だって。あなたたちにしたら「痛みとは与えるものであり騙すものである」の間違いでしょ。やれやれ最後までよく我慢したわ。タリー(「タリーと私の秘密の時間」)ならきっとこう言ってくれる。「ではベッドへ」

 

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