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特集「最高のビッチ」

2020年10月28日

特集「最高のビッチ13」⑦ 岩下志麻1 
婉という女(上)(1971年 文芸映画)

監督 今井正

出演 岩下志麻/緒形拳/中村嘉葎雄/山本學/北大路欣也

シネマ365日 No.3367

独立する女 

特集「最高のビッチ13」

野中兼山は土佐藩元執政(家老)。果敢な藩政改革によって藩を富ませたが政敵の策謀によって執政を辞し、失意のうちに高知郊外の隠宅で没した。政敵は家系を断絶させるため、長男清七、次男欽六、三男希四郎(緒形拳)、四男貞四郎(中村嘉葎雄)と寛・婉・将の三姉妹、生母二人、乳母共々高知城下を去ること34里、宿毛山麓の一ツ家に幽閉した。最後の男子、貞四郎が死ぬまで40年一族は門外一歩を禁じられた。三女婉は時に4歳だった。人道もへったくれもない非道な政道です。男児が死に絶え赦免になったが、姉妹たちは「誰も赦免など望んでおりませぬ。みんな年をとった。このまま何も起こらず身を寄せ合って生きるのです」という長女寛。母は「みんな死んでくれるか」と頼み、真っ先に自害しようとするが婉は反対。そんなことしたら誰も男兄弟の霊を弔う者がいない、という理由もさることながら、内心はやっと世の中に出られる、他人の顔が見られると心がはやっていた▼婉は新しい世界を待ちのぞんでいる。獄舎は禁断の家だった。思春期に入った婉は欲望に悶えるし、兄の一人はウツで閉じこもり、神経がおかしくなり生母を強姦し、母と息子どちらも自死する。寛は乳呑み子と引き離されての幽閉だった。授乳できない乳房は熱を持って腫れ、椀に白い乳をしぼる。婉は男の手によって花開かされた豊満な乳房に目がクラクラ。三男希四郎が半裸になって薪を割るたくましい背中に障子をピシャッ。勉強好きな婉だが「学問が何になる。誰とも会わず、誰とも話さず、世間の道を外れても誰もとやかく言わない」そう理屈をつけて希四郎の閨を襲い「兄上様、婉と死んでくださいまし」。この兄貴が理性的で「耐えるのだ。耐えねば今より無残な姿になる」と諭し婉は身悶えする。幽閉から26年。ついに訪問者があった。野中兼山を師と仰ぐ青年・谷泰山(山本學)だった。高知から34里の道を歩いて訪ねてくれた、40年間にたった一人の人物。婉は一生その恩義を忘れなかった。希四郎と婉は学問の質疑応答のみの、泰山との文通が年に一度であるが許される。兄妹は医薬に通じ、婉はのち医師として自立するまでになるが、希四郎は結核に倒れた。赦免となった姉妹をある日若者・弾七(北大路欣也)が迎えに来た。兼山の弟子の息子に当たる。婉と母と乳母は高知城下の草庵に移り住むと決めた。異腹の姉二人は元の家にとどまった。草庵の来客は兼山の古い知り合いやその妻たちが訪れ、長い間母親や乳母と話し込む。婉はイライラした。泰山宅に弟子として挨拶に行きたいという婉を老藩士は止めた。城下は口うるさい、女子の身で殿方をお訪ねになるのはトラブルの元。やっと泰山と再会の日が来た。「お婉どの」と呼ぶ泰山の声を初めて聞いた婉は「一生に、ただ一度呼んでほしい男の声があるのではあるまいか」。しかし婉は世間知らずだった。生きることの辛さはまず生活費である。米がなくなる。着物を質入れするがおっつかなくなる。弾七が草と餅を持ってきて「これは薬草ですか」と婉に訊く。「干して煎じれば腹痛の薬になる」「ならば薬を作られてはどうか。薬草取りと薬の配達は私が」。知識はあっても実用に転じられなかった身を恥じ、婉は医学と薬学によってたつきの道を得る。一方で泰山への思慕。一方で自立。もし婉に実学と経済力がなければただのタカビー女であったろう。愛と仕事を模索しながら生きる道を確立していく婉の個性が、徐々に鮮明になっていきます。

 

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