女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「別室でミステリーを」

2020年11月6日

特集「別室でミステリーを2」⑥ 
Strange Circus 奇妙なサーカス(2005年 ミステリー映画)

監督 園子温

出演 宮崎ますみ/いしだ壱成

シネマ365日 No.3376

同情の余地なし 

特集「別室でミステリーを2」

冷たい熱帯魚」もそうでしたが、心身ともに人間を痛めつけるのが園子温監督です。本作も例にもれず。実の父親にレイプされ病んでいく美津子は12歳。母親・小百合(宮崎ますみ)は嫉妬し、娘を虐待する。暴力をふるう母親を娘は階段から突き落とし死なせてしまう…という小説を執筆中なのは、エロティックな作家として注目を集める妙子(宮崎ますみ二役)。原稿を取りにきている編集者に読んで聞かせていたが、新人編集者の雄二(石田一成)だけを残し、あとは帰らせる。二人で散歩に出かけた妙子は雄二と別れ、車椅子を畳むとスタスタ歩く。帰宅し誰も入らせない秘密の部屋を開ける。中は豪華な邸宅には不似合いに、乱雑に散らかり弁当殻や空き袋が散乱。チェロケースがあり、妙子は物馴れた口調で話しかける。雄二は編集長から妙子の車椅子生活は偽物で、私生活は謎に包まれている、身辺調査をして正体を洗い出すように依頼を受ける▼小説の完成に歓喜した妙子は雄二を連れ海辺のホテルに行く。昼寝して帰る。家に帰るとチェロケースの穴にコンビニ弁当のハンバーグを詰め込む妙子。彼女の留守に侵入した雄二は、チェロケースに向かって「久しぶりだね」と声をかけて持ち去り、「先生の実家で待っている。大事なペットがどうなっても知らないですよ」と脅しの電話をかける。実家に急いだ妙子はベッドに何かが繋がれている部屋にきた。雄二は妙子を「お母さん」と呼んだ。妙子は混乱しながらも記憶を取り戻す。階段から突き落とされたのは小百合ではなく美津子だった。重度非虐待児として保護された美津子は里親に預けられた。母親に会いに行った美津子は、娘が去って引きこもりになり、狂ったようにめちゃくちゃな文章を書き散らかしている母親を見る。小百合は美津子が保護された後、淫乱なセックスに興じる夫を階段から突き落とし廃人にし、手足を切断してチェロケースに閉じ込めていた。雄二は妙子に胸を開き切り取った乳房の痕を見せた。雄二は美津子だった。美津子は成長し母親に似ていない自分の顔を憎み、乳房を除去して雄二として生まれ変わり、復讐のため母を探していたのだ。ベッドに縛られていたのは手足のない父親だ▼雄二は母親に話しかける。「ひきこもりになったあなたは、美津子と名札をつけて小学校に通ったらしいね。35歳のあなたが。あなたの病気は治らない。小百合が美津子になりすましたのは、寂しかったのだね。あなたに近づくために努力した。編集部に入ってやっとたどり着いた。もういい。全部終わりだよ」「美津子、ごめんね」「いいのだよ、母さん。私は解放されます。小説の最後は主人公をダルマ女にするのだね」。雄二はチェーンソーを振りかざした…妙子はホテルで目が覚める。隣で雄二が眠っている。「なんなの、今の、夢?」と妙子。「どっちが夢ですかね」と雄二が答えた。美津子がトランスした雄二だったどんでん返しはありますが、それを再び妙子の夢落ちにするのは優柔不断、後腐れありすぎの結末です。最悪のクズ男は父親だ。彼は小学校の校長で「心に青空と太陽を。それが人として生きる道です」と訓戒をたれ、娘をレイプする男である。そんな夫を警察に突き出さないどころか、嫉妬して自分を見失う母親とは、雄二(美津子)が言う通り不治の病だ。変態の両親から受けた心の傷は、乳房を切り取ってもズタズタの左右の傷跡が女であった過去を突きつけてくる。救われようのないピカレスクね。父親も母親も同情の余地なし。髪をスダレのように顔面に垂らした、いしだ壱成は女子貞子か。魅力ある人物の誰一人登場しないところが、さすが園子温の造型と言うべし。

 

あなたにオススメ