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特集「別室でミステリーを」

2020年11月9日

特集「別室でミステリーを2」⑨ 
クリーピー 偽りの隣人(下)(2016年 サイコ映画)

監督 黒沢清

出演 西島秀俊/竹内結子/東出昌大/香川照之

シネマ365日 No.3379

香川照之の臭気 

特集「別室でミステリーを2」

ゾッとさせるシーンの連続だから、とことん怖いのかというと、それがどうも、それほどじゃないのですね。西野も常軌を逸しているが、高倉や康子もかなりおかしい。康子は西野が初対面からいかれた男だとわかっているのに、シチュー鍋を持って訪問したり、飼い犬を西野と一緒に散歩させたり、あまつさえ澪をダシにされ、男を家にあげ料理を振る舞うなど、ちょっと無防備すぎる。西野はサイコ男特有の動物的なカンで心に隙のある人間を見分ける。高倉が仕事ばかりで、壊れる寸前の夫婦仲を「とっくに諦めていた。引っ越ししたらいいこともあるかと」居を移した。そこにいたのが西野だから狼の前に肉がぶら下がったようなものね。でなければ「ご主人と僕とどっちが魅力的ですか」なんてイケ図々しいこと聞けませんよ。気力の充実した女性だったら一見しただけで回れ右したくなるのが、西野って男の発するメタンガスみたいな臭気なのよ。これはもう、香川照之の顔・声・歩き方・話し方その他全ての「いやらしさ」に脱帽するしかない▼高倉は在職時代、取り調べ中の失態で容疑者の射殺に至った。そんな刑事が大学教授になれるのかどうかはさておき、妻が嫌がっていた刑事もどきの捜索に、民間人であるにもかかわらず手を出すのだ。それはやむにやまれぬ刑事の習性だったとしても、澪が西野を父親でもなんでもない知らない男だ、と訴えた時に「刑事の習性」が、ピンとシャンとも働かなかったのは不思議だ。さらに輪をかけておかしいのは娘の澪である。彼女は父親を西野に殺され娘に偽装させられ、母親は密室に監禁中だ。怪しげな注射で母親は廃人になっている。西野は母親を殺せと拳銃を(野木から奪ったもの)を手渡す。娘は「できない、できない」とオロオロする。あなた、撃つのは目の前にいる変態男でしょうが。彼女は学校に通っているのだから、集団の中で(友だちはいないとしても)社会的な日常生活を維持する能力はあるし、現に高倉に駆け込んでいるのに、その先はしり切れとんぼだ。あまつさえ、刑事である野木にせよ、警視庁捜査一課の警部にせよ、あっけなく西野家の迷路におびき寄せられる。パトカーでも単乗はしない。必ずニコイチで動くのが捜査の原則ではないか。西野の異常性を引き立てるためとは思うが、ここまで普通の人間や組織をコケにするのはいささか、物語を「作りすぎ」ではないだろうか▼以上の理由から、よくできているとはしても、どうものめり込みにくかったのであります。しかしゾッとするシーンには事欠かなかったので「クリーピー」の目的を達することは達したと思おう。その90%は香川照之の独壇なのだけどね。

 

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