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特集「別室でミステリーを」

2020年11月10日

特集「別室でミステリーを2」⑩ 
バニシング(2020年 事実に基づく映画)

監督 クリストファー・ニーホルム

出演 ジェラルド・バトラー/ピーター・マラン/コナー・スウィンデルズ

シネマ365日 No.3380

北欧ノワール 

特集「別室でミステリーを2」

スコットランド沖の孤島から灯台守が3人、忽然と姿を消した。フラナン諸島の謎として知られた事件に一つの解釈を与えた映画です。灯台が舞台のワン・シチュエーション、主人公は3人。シンプルな構成で、3人がなぜ島を離れたか、を追っていきます。トマス(ピーター・マラン)は勤続25年、いぶし銀の年配の海の男。絵に描いたような灯台守だ。ジェームズ(ジェラルド・バトラー)。家族思いの父親。妻と小さな息子を残して灯台に来た。ドナルド(コナー・スウィンデルズ)。若い新人の灯台守。水平線に浮かぶ島影が近くなると、丘の頂に小さな白い灯台が見える。彼らは6週間、ここで勤務する。他に誰もいない。最低限の自炊ができる簡素な宿舎。岸壁に打ち寄せる高波。北大西洋の寒波が吹き荒れる。3人が理解と人知を超えた状況に追い込まれるのは一人の侵入者があったからだ▼嵐が襲った翌日、ドナルドが崖の下に漂流者を発見した。崖下に降りたドラルドは、死んでいるとみられた男に襲われるが、抵抗して岩で殴って死なせてしまった。皮のトランクがあった。引き上げたが、トマスは中を見るなと主張。見たら厄介ごとに巻き込まれる、迎えの船が来たら持って帰らせ当局に調べさせろと。正当防衛とはいえ、人を殺してしまったドナルドは逮捕されると恐れる。好奇心を抑えられない二人が開くと金塊が何本も入っていた。これで大金持ちだと喜ぶがトマスは苦い顔で金塊は信用できる売人を探して現金に換える、1年間は生活を変えず、羽振りのいい真似もするな、この件は誰にも話すなと厳しく言う。翌日どこかの船が来た。男が二人島に上がって来て「船員が一人救命ボートで船を離れたが、ここへ来なかったか」と尋ねる。トマスは「お仲間はなくなっていた、遺体も荷物も引き取ってもらった」とウソをつく。男たちは疑い深そうに聞いていたが一旦は引き上げ、島を離れたが沖で回れ右して戻ってきた。「コソ泥め、俺の金塊はどこだ」ジェームズとドナルドを殴り倒し、トマスを縛り上げ、太腿にナイフを突き刺して白状させようとした。男の後ろからジェームズが襲いかかり、ドナルドも加わって二人の男を殺す。窓の外に人影を見たドナルドが「まだ仲間がいる」と叫び、3人で追い、ジェームズの放ったナイフで倒すと、相手は子供で、ジェームズの息子だった▼空気が一変した。3人は神経をピリピリ、特にジェームズは塞ぎ込み口もきかなくなった。ドナルドはそんなジェームズを排除し「二人で金塊を持って逃げよう」とトマスに持ちかける。気配を察知したジェームズは、トマスを部屋に閉じ込めた隙にドナルドを殺してしまう。トマスは病気になった妻をろくに医者にも見せず死なせ、生まれた双子は死産だった。その時の回想にさいなまれる。みなおかしくなった。船を沖合に出し、遺体を海に沈めた。「俺も行かせろ」とジェームズが頼む。「ダメだ。お前には家族がいる」とトマス。「家族のためだからだ。俺は嘘つきの人殺しだ。家族にふさわしくない。手を貸してくれ」。ジェームズは海に入り、トマスはジェームズの頭を抑え溺死させる。トマスはどうなったか触れられていない▼暴力と欲と殺し合いの結果だという解釈なのですね。金塊をめぐって、というのは創作ですが、トマスが残した灯台日誌には「ジェームズとドナルドが錯乱した」とあったらしい。3人の中で最も家庭的でコック役だったジェームズが錯乱するとは思いにくいが、多分ドナルドとの人間関係の決裂だろう。現在まで真相はわからず「フラナン諸島の謎」という都市伝説になった。監督、撮影、編集はデンマーク人。冷たい静かな画調の中で、孤立して壊れていく心理劇が、北欧ノワールの雰囲気をよく出していた。

 

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