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特集「別室でミステリーを」

2020年11月12日

特集「別室でミステリーを2」⑫ 
木曜組曲(上)(2002年 ミステリー映画)

監督 篠原哲雄

出演 浅丘ルリ子/鈴木京香/加藤登紀子/原田美枝子

シネマ365日 No.3382

死んだほうがよろしい 

特集「別室でミステリーを2」⑪

天才作家、重松時子(浅丘ルリ子)が自宅で自殺した。階下には時子と縁のある5人の女性が集まっていた。ドキュメンタリ作家の絵里子(鈴木京香)、出版社経営者の静子(原田美枝子)、ミステリー作家の尚美に純文学を書くつかさ。時子のデビュー時からの編集者、えい子(加藤登紀子)。死後4年、時子の命日を挟む木曜日に集まり故人を偲ぶ会が今年も行われた。差出人「フジシロチヒロ」なる人物から豪華な花束が届き「重松時子の家に集まる皆さまへ。皆さまの罪を忘れないために」とメッセージがあった。罪? 時子の死は自殺か殺人か。当時からモヤモヤしていた問題を解き明かそうと、5人の推理と告白が始まる。面白いのですけど、時子の死の基盤にある考え方についていけない。彼女は生前えい子に「あの子たちは心の中では私を葬りたがっている。だったらこっちもそれなりの覚悟を見せなくちゃね」と言うのだ▼どんな覚悟かというと「自分がもう書けないなら、あの子たちを使って私の作品を書かせるの。そのためなら死んだっていいわ」。えい子は晩年の時子の作品が絶頂期と比べるも無残な衰退期に入っていることを知っていた。時子のタッチを知り尽くしているえい子が原稿に手を入れ、ボロを防いでいたが、時子はえい子の改ざんのせいで作品の質が下落したと思いたがっていた。神経がズタズタになった時子は、後継者を指名する、遺言を書く、「私は静子に殺される」など人騒がせな書置きを残す。えい子を除く4人は「自分のせいで時子さんは自殺した、殺したのは私」とか「犯人はこの中にいる」とか「彼女が後継者を指名した手紙がこの家のどこかにあるはず」とか、毒入り缶詰で時子は私たち全員を殺すつもりだったとかのエピソードに散々振り回され、絵里子が一応の結論らしき推理を披瀝するが状況証拠であり決めてはない。つまり、犯人だとか殺人だとか、さっぱりわからないまま、解散となる▼えい子がこんな提案をする。「あんたたちは物書きだし、今回の会合で、隠し事は洗いざらい打ち明けた。そろそろ重松時子のことを書いてもいいンじゃない? 来年の集まりまでに、一人一昨を持ち寄りましょう。来年が早ければ何年でも待つわ。毎年一昨ずつみんなで読みましょう。それぞれの重松時子殺人事件を書くのよ」。これこそ時子の望んだ「あの子たちを使って私のことを書かせる」企画に他ならない。書けなくなった時子の妄想を忠実に実行したのがえい子なのだ。時子は自殺であり、作家の残骸を晒すより、死んだほうがよろしいと引導を渡したのもえい子なのである。

 

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