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特集「別室でミステリーを」

2020年11月13日

特集「別室でミステリーを2」⑬ 
木曜組曲(下)(2002年 ミステリー映画)

監督 篠原哲雄

出演 浅丘ルリ子/鈴木京香/加藤登紀子/原田美枝子

シネマ365日 No.3383

濃密な関係 

特集「別室でミステリーを2」⑪

ミステリードラマとしてはよくできていると思うが、腑に落ちないのは重松時子が、後継者探しとか、自分のことを4人のライターに書かせ、彼女らの作品の中で余韻を残して生き続けようと考えたことだ。えい子の「重松時子殺人事件」の提案に、全員大乗り気で、一躍名を馳せるとチャンスだと帰路につく。えい子だけが意味ありげに見送る。彼女はドキュメンタリーにせよ、小説にせよ、時子のことを書かせることが最初からの目的だった。えい子はおかしいと思わなかったのだろうか。作家が後継者を見つける? しかも時子の腹案では姪の尚美を指名し、自分の死後も重松時子として作品を書くためにレッスンとして、蝶がなんたら、とかいう小説を叩き台として書かせたというのだ。案の定評価はクソミソで、いちはやくえい子に見破られた。そこで彼女に真意を白状し「あの子らに私のことを書かせる」ことにした。自己保存に狂った栄光の天才作家を見るのはえい子も辛かっただろう▼しかし時子の企みに手を貸したえい子も罪深い。川端康成もヴァージニア・ウルフも書けなくなって死を選んだ。命にカンナをかけている一匹狼が作家の面目であり、「後継者」など戯言であり、妄想であり、あなたのお遊戯であると、なぜ時子に言ってやらなかったのだろう。4年前、自殺を示唆してえい子は家に時子だけを残し買い物に出た。時子の処女作「蛇と虹」の見返しにボードレールの詩を書きつける。「奇怪な暗い神殿/希望だけを待つ/それは死が新しい太陽のように空を飛び/彼らの頭脳の花々を咲かせるだろう」そして1時間後に帰りますと付記する。その間に死んでおけということだ。意を察した時子は服毒した。篠原哲雄監督はインタビューで一言だけ、軽く、でも「二人の濃密な関係」と触れている。ワンシーンだが、えい子の背中に寄り添うように時子が横たわっている場面が場違いのように挿入されるのだが、えい子の時子の妄想への思い入れは、濃密な関係以外に思い当たらない。同じ屋根の下で起居し、デビュー以来「作家時子」を育ててきたえい子の心情を、4人の女たちの誰も指摘しないのは不自然だった▼ジャラジャラと続く「謎解きエピソード」の連続は、明らかに観客だましのミステリー映画の常道で、追いかけるうちに退屈になってきた。それを救ったのは、浅丘ルリ子と加藤登紀子の、ウワバミみたいな女優二人の愛憎半ばするセリフの叩き合いだ。

 

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