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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2020年11月19日

特集「美しい虚無12」④ 
I want you あなたが欲しい(1998年 恋愛映画)

監督 マイケル・ウィンターボトム

出演 レイチェル・ワイズ/アレッサンドロ・ニヴォラ

シネマ365日 No.3389

愛の亡霊 

特集「美しい虚無12」

過去に縛られた二人が9年の時を経て会う。マーティン(アレッサンドロ・ニヴォラ)とヘレン(レイチェル・ワイズ)だ。マーティンはヘレンの父親を殺した罪で服役、仮釈放となって故郷ファーヘイヴンに帰ってきた。かつては漁港として栄えたイギリス南部の港町だ。ヘレンは美容院を経営し独り立ちしている。瀟洒な家には室内プールもある。ヘレンがマーティンとよりを戻すか、町の噂になる。ヘレンはラジオのディスクジョッカーと付き合っているが「半年もたつのに君はさせてくれない。気が狂いそうだ」と男は悶絶中。ホンダは姉スモーキーと暮らす移民の少年。盗聴マニアで、姉と男の情事を録音し自分の部屋で再生する。姉もそれを知っているが平気だ。「ロンドンにいる時、彼が帰宅したら母が浴槽で死んでいた。以来口をきかなくなった」らしい。ホンダはヘレンに憧れ、バラの花を贈ったりするが、仕掛けがあって、ヘレンのデートの会話などはホンダに筒抜けだ▼「なぜ帰ってきたの」とヘレンは男を責めるように言う。彼女が14歳、マーティンが23歳だった。現場を見た父親は激怒し、殴り合いになり父親が死んだ、だからあれは事故だったとヘレンはホンダに言う。でも父親を殺したのはヘレンで、マーティンは罪をかぶって刑務所に入ったのが真相だ。ヘレンはどこかでマーティンを待っていた。マーティンはヘレンに会うために帰ってきた。二人はよりを戻すが、過去を引きずる自分に嫌悪したヘレンは男を突き放す。こいつのおかげで自分の心は暗闇のままだ、とでもいうみたいに。保護観察官はマーティンに町を出るよう指示する。「サヨナラを言いたい。会ってくれ」と頼むマーティンにヘレンはドアを開けた。「私としたいから来たの?」ヘレンの言葉は冷たい。「俺を愛しているか。ちゃんと言え、もう一度」。ヘレンの首を絞めるマーティンをホンダが見ている。駆け降りて火かき棒で男を殴りつけた。ヘレンはそれをひったくり、憎悪が噴出したように男を殴りつけ、殺してしまうのだ▼今度こそヘレンは町を出た。リバプールから船に乗った。希望も愛惜もない。過去を捨てたかった女と過去を取り戻したかった男の再会はが何ももたらさなかった。どうして会ったのか、会いたかったからだ。それなのになぜ殺したのか。男と一緒に自分の一部を葬りたかったからだ。マイケル・ウィンターボトム監督に「バタフライ・キス」という傑作がある。確か監督処女作だったと思う。ジュディスという女をあてもなく探すユーノスは、ふらふらと立ち寄った店の女店員に「ジュディスでしょ」と話しかけ、人違いだとわかると殺してしまうサイコ女だ。レコード店のミリアムはユーノスが殺人狂だとわかりながら細々と世話を焼く。ユーノスはミリアムに殺してくれと頼む。それがいちばんいいとミリアムも思う。一緒に海に入り、ユーノスの頭を沈めて溺死させる。1995年の映画だった。3年後、ユーノスはマーティンに、ミリアムはヘレンに姿を変えて現れたように思える。マーティンは帰ってきた愛の亡霊。世間一般の生き方などできるはずがない。行き着くところが狂気なら、私の手で死ぬのがいいのよ、とヘレンは思った…▼レイチェル・ワイズは演技の幅広い人ですし、ブレイクしたのは「ハムナプトラ」ですが、その後「女王陛下のお気に入り」や「ロニートとエスティ」「否定と肯定」などの、重厚かつ社会派映画で快進撃を続けています。

 

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