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特集「美しい虚無-妄想映画の魅力」

2020年11月20日

特集「美しい虚無12」⑤ 
ヤコブへの手紙(上)(2011年 社会派映画)

監督 クラウス・ハロ

出演 ヘイッキ・ノウシアイネン/カーリナ・ハザード

シネマ365日 No.3390

手紙が何だっていうの! 

特集「美しい虚無12」

ヒロイン、レイラ(カーリナ・ハザード)は水牛みたいな女である。背も高く横幅もあり、がっしりした男のような体格だ。服役は12年になる。恩赦による釈放を聞いた時も「終身刑なのに?」と不満気である。牧師館から手紙が来ている。すぐ働ける女性を探している。仕事はヤコブ・リューベ牧師の身の回りの世話だ。レイラは渋々受ける。牧師は気持ちよく迎えてくれた。「あなたの部屋はこの突き当たりです」親切に言う牧師に「長くはいませんから。家事はしませんよ」つっけんどんに言う。牧師は意に介さず「届いた手紙を読んで返事を書いてほしいのです。ご近所の夫人に頼んでいましたが、施設に移ったので」。部屋は暗く静かで無人の家のようだ。目の見えないヤコブを、女は憎らしげにさえ見やる。「ヤコブ牧師、郵便ですよ」元気な配達人の声が聞こえ、牧師の顔面に喜色が溢れる。配達人はレイラを認め「あの終身刑の?」「恩赦で釈放になった」彼は恐ろしげに自転車で走り去った▼開封して手紙を読む。「親愛なるヤコブ牧師。もうすぐ孫が兵役から戻ります。働き口が見つかるか不安です。生活していけるか心配です。孫のために祈ってください」牧師の返事はこうだ。「どんなことも思い煩わないこと。何事につけ感謝と祈りを捧げ求めるものを神に打ち明けなさい。そうすればあらゆる人知を超える神の平和が訪れるでしょう。愛を込めて。ヤコブ牧師、レイラ・ステーン」牧師が自分の名も添え書きしたことを「冗談じゃないわ!」レイラは吐き捨てる。「人は誰しも神が自分を見てくれていると思いたいのです」「あなたね。恩赦を頼んでくれたのは。頼みもしていないのに」と怒る。「私はただ人々の願いを叶える道具にすぎない」。こんな手紙もある「勉強は好きですが先生にいじめられています。僕のために祈ってください」「ペッカに祝福を」牧師は聞かずとも差出人がわかるらしかった。「担当の教師にも。罵ることをやめ、指導する賢さをお与えください」▼「最後です」とレイラは言うが、手紙の束のほとんどを省いているのである。お札が入っていた。「ミンナだね」。手紙「無事北へ着き子供達は祖母と遊んでいます。生活費をくれず暴力を振るい、食べ物にさえ困っていた私にあなたは旅費をくださった。充分すぎる金額でした。きっと祈っていてくださったのでしょう。ミンナ」。牧師館に侵入者があった。レイラが羽交い締めにして捕まえると郵便配達人だった。「牧師が死んでないか心配で見に来た。彼は善良だ。何のつもりか知らんが、早く刑務所へ帰れ!」言い捨てて去った。レイラは冷ややかな目で、わずかに小鼻を膨らませただけだ。牧師館は雨漏りがする。あちこちにバケツやタライを置く。「もっといい家に移らせてもらえば」とレイラ。「提供する人はいるがここを離れない。手紙が届かなくなる」「それが何だっていうのよ!」レイラは牧師と話しているとイライラする。彼のやさしさは自分の過去の傷を剥いて、塩を刷り込むのと同じだ。居もしない神のしもべを演じる偽善者。「手紙が何だっていうのよ」レイラは届いた手紙を井戸に放りこんだのは、仕事を省く了見もあるが、ほとんどは牧師にイラつくからである。

 

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