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特集「ダンディズム-dandyism-」

2021年1月4日

特集「ダンディズム8」④ 市川雷蔵4 
若親分 喧嘩状(1966年 アクション映画)

監督 池広一夫

出演 市川雷蔵/江波杏子/高田美和/小山明子

シネマ365日 No.3435

雷ちゃんの声 

特集「ダンディズム8」

ひとつの疑問。本シリーズを通じて主人公の南条武(市川雷蔵)が「元海軍士官」であることが彼の精神的バックボーンになっています。軍服を着用して敵の前に現れるのが決めシーンなのですが、これって詐欺とか身分詐称とかにならないの? 警官の制服を着て犯行に及んだ「3億円事件」がチラついてしまうのよ。退官したとはいえ元はれっきとした将校であるから、制服を保持していることは不思議ではない、それを着て公務以外の席に出ることは、あくまで仮装でしょう。もうひとつの決めは諸肌脱いだ時の刺青ね。肩から背中にかけた鮮やかな竜の彫り物。本作では南条武が、満蒙の独立を企図する陸軍の過激派を諌めに、陸軍本部にジープで乗り付け「無頼漢には無頼漢としての挨拶がある」と制服を脱いで背中の刺青を見せ、彼らの国を誤る行動の非を訴える。カッコよすぎて観ている方が毒気を抜かれてしまいます▼物語は、過激派がアジアの平和を混乱させるため、利用しようとしたモンゴルのお姫さま(江波杏子)を上海から助け出すシーンから始まります。無事東京へ連れ帰り、憂国の士・木嶋剛の屋敷に預けた。木嶋は身に代えて姫を守ろうと約束、武を自分の後継者に望むが、自分は一介の遊侠の徒でありたいと武は固辞。横浜で口入れ稼業を営む高遠組の客分となる。高遠弥之助は武の父の弟分だった。新興ヤクザの猪之原は外国商社と組んで阿片を密輸、陸軍の過激派は密輸に協力する代償に武器兵力を大陸に送るための、貨物船舶利用を密約していた。横浜で新聞を発行する山本は妹の早苗(高田美和)の協力で、毎日紙面を組み、阿片密輸を叩いていた▼ハマの利権を一手に握りたい猪之原は、真面目な高遠弥之助や新聞社の山本、曲がったことが大嫌いで筋を通す武が目障りで仕方ない。おまけに身請けしようとする芸者の喜久松(小山明子)は武に惚れる事態に発展。煮えくり返った猪之原は武と間違えて弥之助を、過激派は暴走して小島を殺害する。待ったなし。武は海軍の旧友の助けを得て姫をアメリカに亡命させ、弥之助の敵討ちとして猪之原一家に喧嘩状を叩きつける。時は大晦日。雪の吹きすさぶ埠頭で血戦が展開した。海軍直伝の奇襲戦法で武は敵を混乱させ、暗闇におびき寄せ各個撃破で葬り猪之原を斬り捨てた▼江波杏子のお姫さまの退場があっけないのと、小山明子の水際だった出演シーンが少ないのと、外人の悪者商社マンがいつの間にか消えてしまうとか「キョトン」に事欠かないのですが、そのかわり年末の社会鍋とか、ブラスバンドの行列とか、大正の時代風俗が生きています。本作に限らないのですが、雷蔵の演技者としてのスキルを最もよく表している特質に「声」を、その「口調・語調」をあげたい。高く低く、歯切れよく、くぐもって言わねばならないセリフでもはっきり聞き取れる。勝新太郎はこう言っていました。「俳優にとっていちばん大事なのは口跡(声)だ。雷ちゃんの口跡のよさは天下一品だった。低い声と高い声を自在に操り、セリフを聞いていて実にいい気持ちにさせてくれる」

 

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