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特集「ダンディズム-dandyism-」

2021年1月5日

特集「ダンディズム8」⑤ 市川雷蔵5 
若親分 乗り込む(1966年 アクション映画)

監督 井上昭

出演 市川雷蔵/藤村志保/本郷功次郎/松尾嘉代

シネマ365日 No.3436

郷愁の蒸気機関車 

特集「ダンディズム8」

憲兵と結託して悪事を働く新興ヤクザを若親分、南条武(市川雷蔵)が、やっつける。それだけではない。憲兵隊に乗り込んで東京から来ている特別捜査官・吉村少将に憲兵隊の不正を訴える。しかし憲兵の一人は武がニセ士官であり、官名詐称だと暴き、正体はこの通り無頼の徒であると軍服をむしり取る。雷蔵の色白の肌に踊る青い竜と紅色の花が場違いなエロチシズムをかもす。そのショックのせいでもあるまいが、吉村少将は武の言葉に耳を傾け、駆けつけた武の親友であり今は海軍少佐、竹村の証言もあり、憲兵隊首魁をあっさり逮捕するのだ。上手くいきすぎだと引いても遅すぎる。若親分シリーズが徹頭徹尾雷さまの軍服と彫り物の「二つ売り」で突き進んできたのだから、ここは潔く目をつぶろう▼ただね、私人の抗争と違って国家権力の悪事となると、乗り込んで上官に訴えて解決、というのはお手軽すぎると思う。喧嘩して「センセ〜」と職員室に駆け込む子供じゃあるまいし。シリーズ4作目ですが、一作目の「若親分」にあった新鮮さが、だんだん雷蔵のキャラだけに寄りかかるようになってきたのは否めない。敵役は新興ヤクザ、武が尊敬する任侠の鑑のような老親分が殺され、彼には娘がいてこのままでは路頭に迷う。子分は一人去り二人去り、今は昔ながらの義理堅い子分が一人、組を守っている、というのが共通する大体の構図だ。今回の物語は武が亡父の友人、磯田組の親分を訪ねるところから始まるが、親分は憲兵隊の拷問で死ぬ。親分の娘柳子(藤村志保)は弟が危険思想の持ち主として、拷問にかけられ死んだことを武に打ち明ける。何かある、と武は真相を調べるため、磯田宅にとどまる。新興ヤクザの郷田組の幹部にムショ帰りの三次郎(本郷功次郎)がいた。郷田組の暴力と策謀に嫌気がさしていた三治郎は、武暗殺の指示を与えられるが、逆に諭される。その結果三次郎は襲撃され、傷は負ったが相手を刺殺する▼本作はシリーズ中いちばんの腰砕けですね。本郷功次郎と恋人役の松尾嘉代はゲスト扱いですが、劇中フェードアウトしてしまう。藤村志保は「女でも組の再興はできるかもしれませんが」と、緋牡丹お竜・大映版の期待を持たせたがこれまた武の後ろ姿を見送るだけ。要は物語や構成の面白さが薄れていくのが本作からでしょうか。でもここだけは素晴らしい。オープニングに走る蒸気機関車。まさかこの時代、CGはありませんから本物を走らせたのだ。小型の蒸気機関車が大きさのちぐはぐな4両の木造客車を引いて鉄橋を渡る。ボッボーと汽笛を鳴らす機関士がいる。客車に偶然乗り合わせたのが武と三次郎です。どやどや走り込んできた憲兵たちが一人の男を追っている。脱走兵らしい。男は最終車両まで逃げ飛び降りる。武と三次郎は最後部から線路上を逃げる男と追う憲兵を見ながら「何かあったのですか」「脱走兵らしいですね」と言葉をかわす。列車は当時加悦鉄道にあった古典客車です。本作公開の翌年には蒸気機関車が休車となり、木造古典客車は相次いで運行を停止します。普通だとセットで撮るシーンを、現役の客車を走らせ撮りました。明治の香りを止める郷愁の場面が本作を救っている。

 

※加悦鉄道=京都府与謝野町の丹後山田駅から同郡加悦駅までを結んでいた私鉄。ニッケル鉱石も輸送したが運送終了に伴い1985年(昭和60年)5月1日全線が廃止された。

 

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