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特集「ダンディズム-dandyism-」

2021年1月8日

特集「ダンディズム8」⑧ リノ・ヴァンチュラ 
殺し屋とセールスマン(1973年 劇場未公開)

監督 エドゥアール・モリナロ

出演 リノ・ヴァンチュラ/ジャック・ブレル

シネマ365日 No.3439

僕はあなたを見捨てない 

特集「ダンディズム8」

リノ・ヴァンチュラの作品には名作が多い。「死刑台のエレベーター」「モンパルナスの灯」「検察官」「冒険者たち」「影の軍隊」「ラムの大通り」。共演者は順にジャンヌ・モロー、ジェラール・フィリップ、ロミー・シュナイダー、アラン・ドロン、シモーヌ・シニョレ、ブリジット・バルドー。綺羅星のごとく当時のフランスを代表する俳優たちの中で、リノ・ヴァンチュラはひときわ存在感を放っていた。本作では共演者ジャック・ブレル。俳優であり歌手であり…詩人と呼ばれた彼の作詞はジュリエット・グレコが愛唱した。そのブレルとリノ・ヴァンチュラが組むとどんな映画になったのか。書くのがもどかしいほど面白いのだ。政治犯の重要証言者を仕留めねばならない殺し屋ミラン(リノ・ヴァンチュラ)は、狙撃するためにホテルの部屋を取る出廷時刻は午後2時▼隣室がワイシャツのセールスマン、フランシス(ジャック・ブレル)だ。妻との別れ話で失意のどん底、自殺を図るがロープをかけた水道管が外れ隣まで水が滲出する。飛んできたボーイは、自殺未遂は警察に届けねばと言い出す。警察と関わりたくないミランはチップをはずんでボーイを引き取らせるが、フランシスはくどくどと身の上話を始め、妻のところに連れて行ってくれなければ飛び降りるとベランダに出る。大騒動はかなわないミランはフランシスを乗せ、時間を気にしつつ車を走らせる。妻は乗馬練習中。「僕だよ」と走って行った夫に馬首をめぐらせ「近づかないで、馬が怖がるわ」。ホテルに戻ったミランはライフルを装填する。ところがフランシスが戻ってきた。妻の相手は精神科医のフリッツだ。普通、患者をソファに寝かせ、医者は椅子に座るものなのに、二人でソファに座っていた。ミランは歯を食いしばって我慢し、フランソワを追い出すがドアの下から封筒が差し込まれた。「ありがとう。あなたの親切は忘れない」。ミランは気になり、ついフランシスの様子を見る▼非情の殺し屋が気弱なウツ男に振り回される。ほとんどセリフを喋らないリノ・ヴァンチュラは、ある時は太い眉をピクピク。ある時は唇を引き結び、ある時はギョロ目を見開いて睨みつける。「邪魔するな。俺は受けた仕事を果たさないと命がないのだ」フランシスはケロリ。「僕の家で匿うよ。いつまでもいればいい」。2時。大勢の警官に護衛されながら証言者が車から降りた。狙撃者を発見した警官隊がミランを撃ち腕に当たる。ミランは天窓から屋根に。ブランが追いかけてくる。「ミランさん、僕はあなたを見捨てない。困った時の友が真の友だよ」。ミランはゆっくり振り返る。フランシスは声を励まし「ミランさん、頼んでおきました。一緒の部屋になれるように。きっとなれますよ」ミランの前に数十人の男が輪になって散歩している。そこは刑務所…。KYのフランシスに再三再四、ミランは気絶しそうなくらい頭にくるが、ブレルの善良さとボケぶりが、リノ・ヴァンチュラの緊張と噛み合った絶妙のハーモニー。フレンチ・コメディの傑作です。

 

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