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特集「ベストコレクション」

2021年1月13日

特集「令和3年新春ベストコレクション」② 
デッド・ドント・ダイ(下)(2020年 社会派映画)

監督 ジム・ジャームッシュ

出演 ビル・マーレイ/アダム・ドライバー/ティルダ・スウィントン/クロエ・セヴィニー

シネマ365日 No.3444

戦士は死者の中に 

特集「令和3年新春ベストコレクション」

森の隠者ボブによれば「あの幽霊人間どもは魂をなくしている。金や何かと引き換えに魂を売ったのさ。新車のトラックや台所用品だとか、新しいズボンやゲームソフトなど底なしの欲に駆られて」。最終的には欲望が環境を破壊し、地軸がずれ墓場から死者を蘇らせ、彼らが人間を襲い、町を、いずれは人類を破滅させる、ということです。ゾンビはだから、自分が生前こだわった品を呼びながら人を食い殺していきます。あるゾンビは「コーヒー、コーヒー」あるゾンビは「シャルドネ、シャルドネ」。これが死んでも治らない人間の情けない性(さが)だと監督は言いたそうです。ゼルダが飛び去って…彼女こそ、なんという身勝手な女でしょう。君はゾンビ退治に地球に来たのではないのか。首を斬るだけ斬って、迎えが来たらハイ、サヨナラ。ゾンビ集団の中に取り残されたロニーとクリスはどうする▼ロニーは異変が起きてからさかんに「まずい結末になる」と言っていた。「どんな結末になるのだ」とクリスが訊くと「全力を尽くすしかない」とロニー。「でもまずい結末なのだろ」このへんがゆるキャラのジム・ジャームッシュでして、人類滅亡という土壇場にきても切迫感ゼロ。でも腐ってもふたりは警官です。「やるしかない」「やろう」ふたりはゾンビの中に討ち入るのです。ボブのナレーション。「ふたりの戦士は死者の中に飛び込んだ。ゾンビは物質主義の遺物だ。無数の人間の、名状しがたき悲惨よ」…それですむンかい。ジャームッシュ監督の一連の作品「10ミニッツ・オールダー 人生のメビウス」「ブロークン・フラワーズ」「リミッツ・オブ・コントロール」「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」どれも好きですし、本作も監督と息のあった俳優陣、ビル・マーレイといい、ティルダ・スウィントンといい、クロエ・セヴィニーといい、みな阿吽の呼吸です。でも彼らはみな死んでしまう、あるいは飛び去って現在から消滅する、勇気と義務と責任感があっても死なざるをえない主人公たち。世界各地で起こる戦争を圧縮したようなむなしきエンドが、オープニングから全編をゆったりと進行させてきた監督の手のひら返しなのかもしれません。メッセージとしては理解できても、映画のカタルシスとしては消化不良だったわ。やはりカンヌ向きね、この人は。俗な映画ファンとしてはカタルシスが欲しいわよ。でもどこかに笑ってしまう小技を効かせているのね。ロニーのキーホルダーはスターウォーズ、ティルダの武器は日本刀。彼女「ナルニア国物語 第1章 ライオンと魔女」でも日本刀を振るうアクションを見せています。本作でも怪しさはあるものの絵になっていました。ビル・マーレイが、どんな作品でもおとぼけで通すキャラは追随を許さない。かわいそうだったのはクロエ・セヴィニーで、制止を聞かずゾンビ集団に飛び込むそそっかしい女子警官を。髪はオールバックのヒッツメで大きな黒縁メガネ。「モンスターズ 悪魔の復讐」のクロエお嬢様とはわかりませんでした。

 

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