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特集「昭和のスター列伝」

2021年2月3日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵③  
忍びの者 霧隠才蔵(1964年 社会派映画)

監督 田中徳三

出演 市川雷蔵/城健三郎(若山富三郎)/磯村みどり

シネマ365日 No.3465

魅力、それも毒のような 

特集「昭和のスター列伝3」

市川雷蔵の回想をインタビューした「市川雷蔵とその時代」(室岡まさる=徳間書店)で、池広一夫監督が語るには、雷蔵は嫌いな人は徹底的に嫌いで「特に仕事の面でいいかげんな連中とは一切口もきかない。気に入らない監督が出て行ったあと、塩をまかせた」。ストイックで、仕事に強いこだわりを持つ雷蔵の一面が生き生きしていた。本作を見ながらそんな雷蔵らしいセリフだな、と思った箇所がいくつかあった。ストーリーは関ヶ原の合戦によって天下統一を成し遂げた徳川家康が、豊臣家根絶を狙い、京都、広方寺の鐘銘にイチャモンをつけて戦いを挑み、大坂冬の陣となった。豊臣方に馳せ参じる大名は少なく、真田幸村(城健三郎)ほか、寄せ集めの浪人含む7、8万。家康側は20万の大軍を擁する▼霧隠才蔵(市川雷蔵)は幸村の命を受け駿府に潜入、家康の動静を探った。幸村が提案する「無防備こそ最大の防備」方針を大坂城の秀頼はもってのほかと退けた。母・淀君の意向を反映してのことだ。「家康は74歳。我々の隠忍の時はそう長くはない。その間を持ちこたえれば豊臣家再興の芽はあるが、淀君は気がつかない」と幸村は嘆く。幸村配下の忍びの者、穴山小助、筧十蔵らに才蔵は「豊臣家を生かす道は家康を殺すしかない。秀頼は天下を治める器ではなく、家康が死ねば再び騒乱の時代となる。再び忍者の活動する時代となる」と説く。駿府で捕虜となった才蔵は、家康側につけという元伊賀者・武部与藤次に「立身出世のために権力についたお前に俺の気持ちはわからん。信長は真っ向から忍者を叩き潰そうとした。秀吉は信長の弔い合戦に名を借りて、忍者の皆殺しを図った。家康は天下を取る道具として忍者を利用した。その道具が貴様だ」と嘲笑する。大坂夏の陣開戦。総攻撃の家康軍は大砲を撃ち込み城壁も櫓も砕き天守閣に火の手が上がった。秀頼と淀殿は炎の中で死ぬ。お前は侍ではない、豊臣家のために死ぬ必要はない、脱出せよと命じ幸村は腹を切ろうとする。才蔵は詰め寄り「私は一人の人間として苦楽を共にしたいのでございます。死んではなりません。戦とは最後に勝つことです。むざむざ家康に天下を取らせるおつもりですか。一介の忍者でさえ、七度生まれ変わっても家康を討ち果たす執念を持っておりますものを、真田幸村ともあろうお方が自ら死を選ぶとはもってのほか。どうして石にかじりついてでも再起を図ろうとお考えになりませぬか」才蔵の火を噴くような説得に、幸村親子は脱出を決意する▼簡単にいうと才蔵は家康が大嫌い、右顧左眄せず忍者のミッションに全力を尽くし全うする男である。長いセリフを一気に言いくだす雷蔵は気合充分。忍びの者シリーズは和製ミッション・インポッシブルと「新・忍びの者」で書きましたが、そのユニークさと共に、忍者というカリスマ性が、雷蔵の気質に合ったことが力強いエンジンになり、各編粒揃いのエンタテインメントになりました。池広一夫はこうも言っています。「役者としての大きさ、魅力というのは単に演技力の問題じゃない。その人から発散される人間的な魅力、それも言ってみれば毒のようなもの。それがあるからこそみんな魅せられてついていくのよ。それが雷ちゃんにはあった」

 

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