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特集「昭和のスター列伝」

2021年2月4日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵④  
忍びの者 続霧隠才蔵(1964年 社会派映画)

監督 池広一夫

出演 市川雷蔵/藤村志保/藤由紀子/城健三郎(若山富三郎)

シネマ365日 No.3466

よく言った、才蔵 

特集「昭和のスター列伝3」

夏の陣で落城する大坂城から真田幸村を脱出させ、共に薩摩に渡った伊賀者・霧隠才蔵の「それから」が本作。島津藩の当主家久、先代義弘は知将幸村を島津の幕閣に迎えることを歓迎するが、家康のスパイ網は張り巡らされ、島津の内情は駿府に筒抜け。服部半蔵に幸村と才蔵の抹殺を命じたが失敗。くそみそに家康に罵倒される。池波正太郎著「真田太平記」は真田家が当代随一の諜報網を持てたのは、いつにかかって忍者を大事にした、それも家臣として平等に扱ったからだと「草の者」たちを準主人公にし、彼らの奮戦を描いている。本シリーズでは信長、秀吉、家康は二言目に「忍者風情」「たかが忍者」「忍者ごとき」と面罵するのだ。所詮は卑しい身分という差別がみなぎり使い捨て同然だった。霧隠才蔵が「真田十勇士」の一人として重んじられ、身命を賭して幸村に私心なく従い、もう一旗上げさせようと粉骨砕身したのは、幸村が忍者の能力や誇りを理解し、パートナーとして尊重してきたからだ▼島津父子は家康の「幸村を取るか、島津を取るか」の恫喝に勝てず幸村を出し出す。駿府に向かう駕籠を才蔵は襲撃し、幸村を救出しようとするが、主は駕籠の中で自死した。幸村は最後まで「戦国の世は終わった。忍者をやめて血の通った人間として生きろ」と諭していた。「殿、才蔵はお言葉に背きます」と遺体に一言、復讐の旅を急ぐ。これまでのような「本能寺の変」「関ヶ原」「大阪冬・夏の陣」のようなスペクタクルはありませんが、才蔵対服部軍団が繰り広げる天井裏での接近戦、無言の死闘に見応えがあります。才蔵は半蔵を倒し、家康の寝所の真上から足の切り傷の上に毒を垂らす。原因不明の不調を訴える家康に主治医も匙を投げる。才蔵は天井裏から飲まず食わず、身じろぎもせず気配を消し絶命に至るまでの家康を見下ろす。かすみゆく家康の目に天井から覗く才蔵が映る。「霧隠か」「そうだ。お前は死ぬのだ。俺に殺されるのだ」「愚か者よ。放っておいてもわしは死ぬ。死んだとても徳川は小ゆるぎもせぬ」「ほざけ」雷蔵のアイメークが濃くなり、疲労と断食と憎しみでどす黒くなった忍者の表情がよく出ています。家康ご臨終。「やったぞ、俺は勝ったぞ。殿、才蔵はやりました。才蔵は勝ちました」歓喜して走る才蔵。幸村も家康も正しい。才蔵の行為は歴史に埋没する虚無だ。しかしながらアイデンティティを、自己存在を貫くとは、有為・無為の他人のレッテルによって価値を決められることか。才蔵は、どんなに愚かだと、虚しい行為だとそしられたところで「才蔵はやりました」の一言を言えたことで存分に生きた自分を確認したのだ。所詮虚しいから何もしないとは、負け犬の逃げ口上だ。勝ちを決めるのは自分の心の中にある自分の認め方ではないのか。「才蔵は勝ちました」よく言った才蔵。それでこそ、あっぱれ。

 

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