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特集「昭和のスター列伝」

2021年2月5日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵⑤  
忍びの者 伊賀屋敷(1965年 社会派映画)

監督 森一生

出演 市川雷蔵/八千草薫/山形勲

シネマ365日 No.3467

敗北の忍者 

特集「昭和のスター列伝3」

本作の雷さまガールズは八千草薫です。34歳でした。美少年みたいですけど。例によって史実を取り入れた盛り沢山な内容です。市川雷蔵は石川五右衛門、霧隠才蔵に続き、島原の乱で果てた父の跡を継いで忍者となり、二代目霧隠才蔵を演じます。八千草薫は真田幸村の遺児、百合姫。才蔵とは兄妹のように育ちました。別れ別れになったふたりは老中・松平伊豆守(山形勲)の屋敷で再会する。徳川幕府転覆を狙う才蔵にとって伊豆守は最大のライバルだ。屋敷から逃げようという才蔵に「私はもう幸村の娘ではなく、慈愛を持って育ててくれた伊豆守の娘です」。才蔵は知恵伊豆がタダで養うはずがない、「そんなことがお分かりになりませぬか」頭を冷やせと説得するが、「ノー」。案の定伊豆守は彼女を甲賀流忍者・お蘭として忍者部隊の取り締まりを命じていた。才蔵とは敵味方である▼時代背景は「慶安の変」です。由井正雪、丸橋忠弥を中心とする浪人部隊が幕府を弾劾、不穏な動きを見せていた。才蔵は親の代から鉄板アンチ体制であり「徳川の天下平定は諸大名の取り潰しの上に成り立った非道な制度。徳川の強力な権力に立ち向かうのが私の生き甲斐」だから、正雪の後押しをして幕府転覆に加担する。一方で紀州大納言頼宣に天下を狙う野望ありという情報を得て、正雪と頼宣の会見をセットする。正雪は頼宣のお墨付きと軍資金1万両を要求するが、うかうか承知する頼宣ではなく、白紙のお墨付きを与え、家老・牧野兵庫に、お前の一存でしたことにしろと言い含め、1万両は御金蔵荒らしの仕業と幕府に届け出ておく。権力者というのはズル賢くて、自分が火の粉を被ることは決してしないのよね。正雪らは決起集団を三班に分け、江戸本拠・由比道場のトップは丸橋忠弥だ。旗揚げ寸前、御用提灯が取り囲み忠弥らは一網打尽。才蔵も捕まる。才蔵が見たのはにこやかに取り決めを交わす正雪と伊豆守だ。「由比(替え玉)は駿府で切腹した。私は橘右京と名乗り相模10万石の城主に生まれ変わりましょう」などと言っている。転覆計画の首領は伊豆守とグルだったのだ▼才蔵はつくづく「武力に代わって知力が政治を変える。何かを求めてさまようのが今の私にふさわしい」とすっかり燃え尽き症候群。伊豆守の屋敷を出た百合姫と旅装束で海辺に立ち「姫、お幸せに」と言い残しひとり、無人の浜をゆく。本作は何となく力がない。釜茹での五右衛門はそれなりにワイルドだったし、初代霧隠才蔵は家康暗殺に燃え、名将・真田幸村と生死を共にし「戦とは最後に勝つこと」と「名言集」に載せたいようなセリフで感動させたのに、本作は「さまよう」雷さまなんて、何とかしてよ。本シリーズは、歴史好きのファンにとっては知り尽くした史実を踏まえてのフィクションの面白さにあった。もちろん本作もそうなのだけど、七度生まれ変わっても首を獲ってやるという、忍者のミッション・インポッシブルに賭けた執念より、政治の謀略に慨嘆し、ゆえに「武力の時代ではない」と才蔵に言わせる。本作はシリーズ中「敗北の忍者」を描いた珍しい一編でした。

 

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