女を楽しくするニュースサイト「ウーマンライフ WEB 版」

  • facebook
  • twitter
  • line
  • rss

特集「昭和のスター列伝」

2021年2月6日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵⑥  
忍びの者 新霧隠才蔵(1966年 社会派映画)

監督 森一生

出演 市川雷蔵/藤村志保/田村高廣

シネマ365日 No.3468

雷蔵の時代 

特集「昭和のスター列伝3」

「忍びの者」シリーズ7作目。今回の霧隠才蔵(市川雷蔵)の野望は徳川家を根絶やしにすること。家康を暗殺するだけでは徳川の幕藩体制はビクともしない、後継者秀忠、その係累をも根絶する、というのです。執念には感服するのですが、あまりにも遠大な志と計画に突き進む才蔵に、本シリーズもついにファンタジーの域に入ってきたと、首をひねるようになるのが本作。そのせいかエンドはカンヌ国際映画祭の何かの特別賞受賞作みたいな、意味ありげだけどよく考えたら何もなさそうな、頼りないものになっています。大阪夏の陣も終わり家康は秀忠に将軍職を譲り、駿府城で引きこもって背後から睨みを利かせています。日本64州は「上様のもの」と持ち上げるオベンチャラには耳を貸さず、最後の敵は伊賀忍者だと、これまた執念を燃やす。諸大名と公家は武家諸法度と禁中公家諸法度でがんじがらめにしたが「忍者は己の執念一筋に突き進む。寸断されても生きているヘビみたいなやつら」だと憎悪を隠さない▼しかし伊賀忍者の数少ない生き残りも忍者狩りによって1人減り、2人減り、とうとう才蔵含め3人になってしまった。駿府城に忍び込んでもなぜか情報が筒抜けになっており、伊賀の「くの一」あかね(藤村志保)に内通者の疑いがかかる。あかねは身の潔白を証明しようと単身秀忠の行列に斬り込み、風魔大十郎(田村高廣)の罠にはまって捉えられた。風魔一族とは、家康が伊賀に太刀打ちできるのは風魔しかいないと、箱根山中にこもる忍者軍団を呼び寄せたのだ。彼らの得意技は火の術ファイアー・バトンである。あかねの抗議を知った3人は誤解に気づき、救出しようとするが2人殺され、才蔵は伊賀最後の忍者となる。家康は病死した。大十郎と勝負を決するべく才蔵は雪の箱根に。大十郎以下、数十人を全滅させる。同じ60年代のヒット「若親分」シリーズに通じる無双のアクションであります。あかねは忍者なんかやめて一緒に暮らそうと説得するが、ここで「うん」と言う雷さまではない。俺は今から江戸へ、秀忠を討つ、といい箱根の険峻に抱かれた雪の野に消える▼大映倒産まで永田雅一と歩み、取締役京都撮影所長を務めた鈴木晰也(すずき・あきや)はインタビューで答えている(「市川雷蔵とその時代」前出)。「雷蔵の映画というのはウソをホントらしく見せるのが成功する。眠狂四郎が女を裸にする。雷ちゃんやからいやらしくなく見られる。三船敏郎がやると見てられまへん。円月殺法も勝ちゃん(勝新太郎)がやるとアホらしくて、何やってんのや、となる。雷ちゃんはそういうウソをまっとうに見せられる。『ある殺し屋』だって『忍びの者』だってみなとんでもない大ウソや。大ウソだけど雷ちゃんがやるとまっとうになる。そういう役者なんです」してみると雷さまファンはこぞって雷蔵の「まっとうなウソ」に喜んで付き合ってきたことになる。若親分シリーズ8本、「忍びの者シリーズ8本」「眠狂四郎シリーズ12本」。それらは昭和30年代から40年代半ばまで、戦後の日本映画の最も充実した時代であり、イコールこの罪な男「雷蔵の時代」でした。

 

あなたにオススメ