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特集「昭和のスター列伝」

2021年2月9日

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵⑨ 
切られ与三郎(上)(1960年 恋愛映画)

監督 伊藤大輔

出演 市川雷蔵/淡路恵子/中村玉緒

シネマ365日 No.3471

しがねえ恋の情が仇 

特集「昭和のスター列伝3」市川雷蔵

歌舞伎の、歌謡曲の「お富さん」を知っている人なら粗筋は見当がつきます。江戸のロウソク問屋伊豆与の総領養子・与三郎(市川雷蔵)は、跡目を継ぐはずだったが両親に実子が生まれた、自分がいては邪魔だろうと家を飛び出し歌舞伎小屋の三味線を弾いていた。義母は実の子与之助に家督を継がそうと画策した。与三郎は腹違いの妹おきん(富士真奈美)の恋慕をよそに出奔する。木更津で新内流しの夜、自分の三味線に合わせた妙手の三味に惹かれ、料亭の女将お富(淡路恵子)と巡り合う。座敷で酒を酌み交わし、与三郎の額に蚊が止まった、その蚊がお富の頬に。お富の頬の蚊を与三郎がひっぱたく。微妙な気配をかもすふたりの仕草が粋だ。当然のごとく結ばれる。お富は漁師の網元源左衛門の囲い者だ。お富と与三郎は手に手をとって駆け落ちするが捕まり、与三郎は天井から吊り下げられ全身に34カ所の刀傷を受け、簀巻きにして海に放り込まれた▼浜に打ち上げられた与三郎を女歌舞伎の一座が助けた。女役者の桂(中村玉緒)に好意を寄せられるが、借金のカタに一座は解散、女役者たちは宿場に売られ、図らずも湯の町で与三郎は桂に出会う。貸し元の情婦となっていた桂は自分を連れて逃げてと与三郎にすがる。与三郎は逡巡しながらも彼女を迎えに行ったが、座敷にいた桂は貸し元を殺していた。親分を迎えに来た子分たちと与三郎は鉢合わせ。親分の仇だ、こいつらを斬れと連中がわめく。とたん桂は与三郎を指し「そいつだよ、親分を殺して私を無理やり連れ出したのは」とコロリ裏切る。怒りに燃えた与三郎は桂を殺し、お縄になるが破獄し姿をくらました。殺しと牢破りで与三郎は関八州のお尋ね者になった。貸し元一家の子分たちに追われながら江戸に舞い戻ったのは、一目おかねの顔を見たかったからだ。伊豆与は与之助の実母が仕切っていた。目障りな先夫の娘おかねを城の御用商人係・飯沼左門の囲い者にしようとする▼委細を知った与三郎は同じ安宿のごろつき・コウモリの安を誘って、おかねの後見人となっている山城屋の別邸に乗り込んだ。そこにいたのがお富だ▼「お富、久しぶりだな」。上がり込んだ与三郎が裾をまくって足を組む。歌舞伎でおなじみの場面だ。雷蔵の台詞回しがいい。「声の雷蔵」の真価発揮。聞かせられないのが残念だが、日本語の流麗な語調だけでも紹介する。「しがねえ恋の情が仇、命の綱の切れたのを、どう取り留めてか木更津の、巡る月日も3年越し、面に受けたる看板の、疵が勿怪の幸いに、切られ与三郎と異名をとり、押し借り・ユスリも習おうより、慣れた時代の源氏店(源氏だな)、その白化け(しらばけ)は黒塀に、格子造りの囲い者、死んだと思ったお富とは、お釈迦様でも気がつくめえ」。源氏店とは、本当の地名は「玄冶店」(げんやだな)。現在の東京都中央区日本橋人形町あたりです。お富も海に放り込まれたのですが、舟を出していた山城屋に助けられ別邸に棲むことになった。お富は仰天する。そこへ山城屋が出先から戻ってきた。ユスリの類が来たと思った彼は金を包んでひとまず引き取らせ、あれが与三郎かと見当をつける。お富は悪びれず「死ぬほどのぼせ上がっていたものですから」。山城屋は苦笑するしかない。淡路恵子がいなせだ。本作は市川雷蔵の一人舞台かというとそうではないのだ。彼を取り巻くふたりの女が特別だ。ボンドガールならぬ「雷さまガール」で本作は引き締まっている。

 

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